「『痛くない死に方』との二本立てにて。」けったいな町医者 osincoさんの映画レビュー(感想・評価)
『痛くない死に方』との二本立てにて。
貴重な映像がたくさん出てきます。
あまりにあっさりと、人の最期を映し出してくれることで、看取りのリアルを感じると共に、"死"が自然であることを伝えてくれます。
ご自宅で膝の腫れ上がったオンダさんが、あれほど嫌がっていた施設で、どんどん元気になって、白やピンクのフワフワ部屋着になっていく姿がとても可愛かったです。
長尾先生はもちろんですが、介護士のお姉さんたちも明るいし、尼崎の土地柄もあるんでしょうか?関西の笑い文化は、あったかいですね。
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何度も看取りを経験しているナースからは、死が迫った時に多くの人が後悔を口にすると聞いたことがあります。もっとああしておけばよかった、こうすればよかった。あの人にお詫びをしたかった、お礼を言いたかった。もっとちゃんと生きればよかった、と。
Living willを丁寧に書き残し、正に"枯れるように"逝った男性。大切な人に感謝を伝え、生を全うされたであろう姿が羨ましく思えました。
長尾先生の本を初めて読んだのは15年ほど前でしょうか。"枯れたように死ぬ"のが自然だと言うこと。多くの人が溺れ死んでいると言うこと。現代医療は死ぬのが負けだと思っていること。本編の内容は、その頃から一貫しています。
40〜50年前までは看取りが当たり前だったのですよね。
長尾先生が「本は懺悔として書いている」と言っていたのが印象的でした。
"死"は自分にとって、人生の探求テーマの一つでなのですが、生きるとはなんぞや?という考えと切り離せません。
誰もが経験することなのに、未知の世界。健やかに死を迎えること、ピンピンコロリは、みなが望んでいることだと思います。
子供の頃は、異様に死が恐ろしかった。自分だけでなく、両親や身近な人がいなくなる恐怖に襲われることがありました。
年を重ねて、死生観はずいぶんと変化したと思います。
"生老病死"
一部の宗教や算命学やスピリチュアルの世界では"体は借り物"だと言われます。この世に生を受けたものは、その時に必要な役割や課題を持って生まれると言われます。
子供の頃はその使命を覚えている人もいるようですが、社会に揉まれ、さまざまなルールや抑圧の中で、多くの人は忘れてしまいます。その使命を全うしているかどうかで、人生、境遇、死に方などが決まってくるそうです。
この借り物のお体を丁寧に扱って、自然界に必要な役割を果たし、きちんとお返ししないといけないんですね。
でも、課題がたいがい自分の苦手とするものだったりして、神様のイジワル。。
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本編の話に戻りますが、きっとこの編集、長尾先生も交えてますよね?
『痛くない死に方』のDVD特典というポジションのようですが、個人のドキュメンタリーってどうしてもプロモーション的になりがちですし、テーマから言ってもシビアな雰囲気になりかねないのですが、「そうはさせない」という意図のようなものを感じました。
高級車の中でお菓子(あられ?柿ピー?)をバリバリ召し上がるとかね、いいです。好きです。
注射をされるご婦人の怪訝そうな顔には、吹き出しそうになりました。
長尾先生の歌唱のたびにナレーションが被るのは、あれでしょうか、監督やスタッフの心遣い?
1人紅白の本番に至っては、熱唱中の長尾先生を背景に、玉置浩二さんの歌唱力高すぎソングが流れるという仕上がりに。笑
クリーニング屋さんが閉店してしまうシーンとか、車中で話を聞きつつ映像はフロントガラスから見える空だったり、カメラが一生懸命ベスポジを探している様子がリアルでした。
撮影期間は2ヶ月とのことですが、その短期間にこれだけの内容ですから、長尾先生の日々の濃さがよくわかります。
いち治療者としては、減薬に賛成です。投薬は3薬までという方針、広まってほしいです。