劇場公開日 2021年2月13日

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「枯れるように死ぬこと」けったいな町医者 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0枯れるように死ぬこと

2021年2月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

終末期の在宅治療、および、尊厳死がテーマの映画であった。
長尾医師いわく、「ありえないドキュメンタリー」。複数の終末期の患者が、モザイクなしで出演している。
“現場”が見える作品だ。

特に共感したのは、「枯れるように死ぬ」という点だった。
2リットルパックの点滴は間違っていると、長尾医師は憤る。
自分の父は、足がむくんだり、腹水が溜まって苦しんで亡くなった。
患者に対して、糖分・水分・酸素を与えるということは、時に過剰であり、また、がん細胞にも栄養を供給していることになる。

“多剤”症の問題も出てくる。
コロナウイルスのワクチンさえ、可能なら打ちたくないと思っている自分にとって、これまた共感できる話だった。
医者は患者を薬づけにして、製薬会社のセールスマンと化していると、長尾医師は憤る。
武器ではないが、ここにも「シャドー・ディール」があるのだ。
長尾医師は、「薬以外でどこまで患者に寄り添えるか」をテーマにしているという。

思うに、医学・製薬業界の“もうけ主義”と、こう治療しておけばとりあえず糾弾されないという“無責任体制”が、今の“延命至上主義”の医療の根本にあるのだろう。
そこから外れる“異端”は、重い責任を負うことになるので、大変なことだ。

そして、「尊厳死」と「リビング・ウィル」。
麻生大臣の“暴言”も、このテーマに限っては(笑)、自分は理にかなっていると思っている。政争の具や、マスメディアのおもちゃにすべき問題ではない。
「平穏死」という聞き慣れない言葉と、その“5つの条件”も示されるが、ほぼ同じ意味だろう。
本作は、尊厳死や平穏死を、抽象的・政策的に扱うのではなく、「けったいな町医者」の活動を通して具体的に語りかける。

なお、映画「痛くない死に方」の“DVD特典”が、制作のきっかけだという。
本作を付けてフル装備にしたら、劇映画が好きな人間と、ドキュメンタリーが好きな人間の両方を取り込むDVDになるだろう。

Imperator