海辺の金魚のレビュー・感想・評価
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小川未祐の無限の可能性を掬い上げた、小川紗良の非凡さ
撮影当時24歳だった新鋭・小川紗良の長編監督デビュー作。若々しさ、清々しさだけでなく、時に良い意味での粗さも残し、非凡さは十二分に示すことが出来たのではないだろうか。それは、ベテラン撮影監督・山崎裕の切り取る画の強さ、優しさと相まって、主演の小川未祐の可能性を観る者に提示してくれる。今後は、ベテランプロデューサー、新人撮影監督らと組んだときにどのような作品に仕上げてくるかも期待してしまう。
子役の演技とエンディングが良い
どの子役も演技が良かった。男の子の笑い方も可愛いかったし、女の子たちも自然な喋り方で好感が持てる。
エンディングで流れる主題歌『あ、そ、か』(元チャットモンチー・橋本絵莉子)とエンディング中の写真が素朴で美しくて良い。
【”「誰も知らない:優しき風合の海辺バージョン」”身寄りのない子供達が暮らす家を舞台に、彼ら彼女らの世界と成長を温かく描いたヒューマンドラマ】
■身寄りのない子供たちが暮らす家で育ち、この家で暮らす最後の夏を迎えていた18歳の花(小川未祐。
ある日、8歳になる親から虐待を受けていた晴海が入所してくる。
花は心を閉ざした晴海に昔の自分を重ねて彼女と過ごすうち、自分の中に今まで感じたことのない感情が芽生えてくるのを覚えて、交流していく・・。
◆感想
・今作の様なテーマを持った作品は、暗いシーンや目を背けたくなるシーンが多いが、今作は何故か爽やかさを感じる。それはきっと、花役の小川未祐と晴海役の少女との関係性が、花が少女を且つての自分にダブらせて、基本的には優しい態度で接しているからだと思う。
・花が金魚を海に放つシーンは、”淡水魚だから死んでしまうよ‥。”と思ったが、監督のメッセージは別で、
”金魚は海では生きられません。それでも、私はもう一度海に連れ出したいと思ったのです。映画の主人公が、私が、そしてあなたが、自分自身の人生を歩みだせるようにと祈りを込めて”
とある。成程。
<今作は、小川沙良さんの初の長編監督作品であり、且つ脚本も担当されている。
是非、この優しき視点で厳しき現実を描いたセンスを、更に伸ばして欲しいと思った作品である。>
うーん。 色んな問題で親と離ればなれに暮らす子供たちの家。もうすぐ...
うーん。
色んな問題で親と離ればなれに暮らす子供たちの家。もうすぐ大人になり家を出る娘と新たにやって来た娘。重なりあう境遇・ここにいる理由・繋がる絆。多分3回くらい観ないと本質はわかんないだろうなぁ。って感じの感想を表現するには難しい作品。
とても面白かったです。
海に放った金魚は、とらわれていた母への想いなのかな。
1時間ちょっとの短い映画。
鹿児島の自然豊かな風景の中で、自然に、壮絶に、孤独に生きる子どもたち。
ハナやハルミの母親はどんな人なのか、子どもにどんな想いを持っているのか、エピソードが欲しいなぁと思った。でも、、子ども目線からすると、それは分からないもの。映画としては、これでよかったのかもな。
母親にとらわれずに生きて行ってほしいけど、母親の存在は忘れないで生きてほしい。非常に難しいテーマだけど。
花ちゃんと春海ちゃん
2021年映画館鑑賞67作品目
7月25日(日)チネラヴィータ
『ビューティフルドリーマー』で主演した小川紗良の脚本監督作品
玄人には高く評価されている期待の若手映画監督のようだ
若くて美人で頭が良くて有能と非の打ち所がない小川紗良
言いがかりをつければ嫉妬してるようで惨めになる
主演の小川未祐は同姓だが他人のようだ
今回の演者のなかで小川未祐が圧倒的にルックスがいいのが印象的
「星の子の家」という児童養護施設が舞台
小川未祐が演じた花はその施設の年長者で18歳
入所当初は心を閉じていた春海だがしばらくするとみんなとうちとけ花と仲良くなる
花の母親は花が幼少の頃に祭りで毒入りかき氷を提供した疑いで逮捕されて有罪判決で刑務所に入っているようだ
演じたのはカラッと乾太くんのCMでお馴染みの山田キヌヲ
寝不足のせいか眠くなる内容だ
だが腹は立たなかったのでつまらなかったわけではないようだ
美しい映像とショパンのノクターンのおかげで眠気が何度も襲ってきた
タイトルなし
山崎裕撮影監督、川島小鳥スチール担当、これがこの作品の力強さを作っている。少女たちの繊細さ危うさをすごく丁寧に撮ってる。小川紗良監督の、自分で学んだ調べた経験した実験した努力を基にした自信と大胆さがよく出てると思います。
うまく言えないがフロリダプロジェクトを連想した。
上映劇場数少ないのもったいない
九州ではたった2ヶ所しか上映館なくて撮影県で舞台挨拶したからついでに博多も来てくれたらよかったのに。。。
この映画は監督に惹かれて観ました。監督ご自身が主演してもなんも問題ない中で監督に専念するだけのことはありとても素敵で奥行きのある作品だと思いました。子供たちのインタビューのようなシーンは、子供たちがそこで生活している様子を映し出すことで物語に真実味を付加する大事なシーンだと思いますが、それが本当のインタビューでも演技でも子役でもない素人の子達からはなかなかまともな成果は得られないので他の多くの映画ではないほうがマシなことが大いのに、本映画では自然で十分過ぎる成果があったと思う。きっと監督が日頃からの和を大切にしていい雰囲気で撮影することを心掛けているのが窺えました。
最後の金魚を海に放つシーンは題名からも画的にも海に放たなくてはかっこがつかなかったのでしょうが、観てる時は“えっ?死んでしまうよ!ポニョ?”と単純に思いましたが、結局は金魚を水槽から出して自然に放つとそれが淡水の川であろうが池であろうが長くは活きれないので画的には海で正解なんだと思い至りました!ただ少し分かりにくかったかなぁ。。、
総合的には大満足でした!
是枝作品は細胞分裂を繰り返す!
ビューティフルドリーマーに主演した彼女が監督!?
しかも、是枝監督に学生時代師事していたらしい。
是枝作品は、社会の底辺や、それにまつわる不幸、犯罪にスポットを当てた作品が多い。
この作品も、虐待を受けた子供や、親が犯罪を犯した子供を保護する施設が舞台となる。
ストーリーは、親から虐待を受け、保護された晴海の施設での様子と、主人公の花と母親との回想シーンが並行して進んでいく。
施設での描写は花と晴海、そして、花とタカ兄とのやり取りが中心だ。
現在の花と母親や、晴海とその母親との間の描写はなく、ストーリーに厚みを欠く。子どもたちを流しそうめんに誘った男の子と花との親しくなるきっかけや関係性も、描き方は薄い。
しかし、低予算で、初監督作品であることを考えると、悪い出来ではないのかもしれない。
ラストシーンで花は海に金魚を放した。小川監督自身が、観賞用として退化し、海で生きられなくなった金魚を、海に返したかったらしい。
金魚は海では生きられない。この映画の結末も、金魚とともに、海の藻屑となり、波間に消えていった。
小川未祐の目力が凄い
母の事件により児童養護施設で育った花は18歳になり、施設での最後の夏を迎えていた。そこに新たに8歳の少女・晴海がやって来た。ひとりで殻にこもっている晴海にかつての自分を見てる様に感じた花は、晴海に寄り添う中で新たな感情を持つようになったという話。
なんらかの理由で親元を離れ養護施設で暮らしている子供達だから、それぞれに色んな事情が有るのだろうと観ていて、それが徐々にわかってくるストーリーは良かったと思う。
淡水の金魚を海に放ったら死んじゃうよ、って言いたくなった。
主演花役の小川未祐の目力が強く、凄く印象に残った。
次回作に期待したくなります
長編処女作だそうで。
ここまでの作品として仕上げられるって
すごいですね。女優もやりながらって
恐るべき才能ですね。
それも25歳。いやはや、びっくりです。
さて、本作。
安全な金魚鉢の中を泳ぐ金魚に
例えた少女の成長の一端を描く物語。
ストーリーはとてもわかりやすく
高校3年女子の小さくも強い決断を
肩肘はらずに鑑賞できます。
彼女(花ちゃん)のこれからが
気になりますね。
静かに、短編小説のページをゆっくり
読み進めるように展開していきます。
この空気感好きです。優しい。
あまりセリフに語らせず、説明も
少なめでリズムよく静かに
展開していきます。
故にちょいちょい出てくるイベントの
不穏度が上がるんですよね。
なかなか良いです。
それと、子供達のキャスティング、
見事なのではないでしょうか?
演技とリアルの間を引き出す
手腕は見事だったと思います。
演者さんたちとの空気感も自然
でしたしね。
ただ、綺麗すぎるかな?
不憫な子供達の闇が見えてこない。
そんなアッサリいくかい?って。
花ちゃんもしかり。
「こう言う子だった」だけでは
乱暴かな?葛藤が形だけで心情が
伝わらないんですね。
深みが足りないんです。
監督がイメージしてるだけ
なんじゃないかな?それを描いて
るだけなんじゃないかな?
あと大事な花の動機がイマイチ
響いてこないんです。
その行動の根拠は?ってとこ。
こう言うことがあって、こんな心情
になりましたの描写があっても
良かった。
あと、男子生徒うまく使えば
もっとよかったのに。
重箱の角突きますが、ラストの
あのシーンは、学術的にペケな
気がするから、ちょいと萎えました。
次回作に期待。
花のまなざし
若手女優としても有望株である小川紗良の初商業映画監督作品。児童養護施設で18才を迎えた主人公・花が、新しく施設に入ってきた少女・晴海とのふれあいを通じ、葛藤し、成長していく姿を描いている。
主人公を演じた小川未祐の真っ直ぐなまなざしが強く印象に残る。横顔が二階堂ふみに似ている感じで、これからの活躍が期待大。
子供たちの自然な演技を引き出す小川監督の演出力は、師匠の是枝裕和譲りか。フレームの切り取り方に上品なセンスを感じさせる。ローカル鉄道、砂浜、流しソーメン、夏祭りなど、ロケーションも好ましい。
ラストシーンは、母親からの呪縛を脱し、自分の力で生きていこうとする主人公の覚悟を示しているよう。
エピソードの一つ一つをもう少し深掘りしてほしいという物足りなさはあるものの、今後、もっと長尺でじっくり描いた作品を届けてくれることを大いに期待したい。
#53 レイトショーで観たい映画
児童養護施設の存在は知ってたけど、主人公のハナのような立場の子がいることを想像していなかった。
良い子にしないと親が迎えに来ないと言われるハルミ。
良い子にしても絶対に親が来ないハナ。
好きだった母親と今ある現実から解き放たれたい気持ちを金魚で表現するところが良い。
朝早い回で観ちゃったけど、後は寝るだけとなるラストの回で観たほうが余韻に浸れる気がする。
タイトルがすべてを物語る
こんなにすがすがしいバッドエンドがあるだろうか。
いや。
こんなにかなしいハッピーエンドがあるだろうか。
いやいや、そのどちらでもなく、どちらでもある。
そのエンディングの一部がオープニングに使われている。
波打ち際で這いつくばって激しく感情を昂らせている。
そこで何が起きていたのか、わからないまま暗転して、金魚鉢の金魚のカットに切り替わる。
タイトルバック「海辺の金魚」
このタイトルが物語る、金魚は海では泳げないという事実。
それが象徴するような、単純に割り切れない複雑な少女の心もようが、ラストになってようやく一気に紐解かれるのだ。
解放感はない。
かといって閉塞感もない。
なんともいいようのないそのラストは、児童養護施設で育つこどもたちの、明日の滑走路を走る精一杯のリアルなのかもしれない。
説明を極力排した小川紗良スタイルは、長編デビュー作にしては映画としての気品にあふれている。
また、子どもたちの自然なふるまいや表情を自然な風景として撮れているのは熟練監督以上ともいえる。
そこは山崎裕撮影監督の技術のおかげでもあり、是枝裕和監督の薫陶を受けていると言われてしまうだろうが、編集の妙はヨーロッパスタイルのクオリティで舌を巻く。
「いい子」についての映画でもある。
「いい子にしてなきゃ」「いい子にしてろよ」
的なフレーズは思わず口にしてしまうのが世の常だが、その言葉は裏を返せば呪いの言葉だ。
子どもにとっては親や先生から「いい子にして」と言われれば、それを金科玉条としてしまう。
ましてや、「いい子にいしてればお母さんに会えるよ」と言われれば「希望」を抱き、かなわなければ「絶望」を感じる。
子どもにとっては「生か死か」に関わる問題だ。
「いてくれるだけでいい」と伝え、存在を肯定してあげなければいけない場面は多いし、それをベースとして接しなければいけないのが本来なのだが、大人はなかなかそれができない。
ついこの前まで(今でも)同じ境遇で、「いい子でいて」が呪いの言葉となっていた18歳の主役・ハナでさえ、新入りの保護児童につい同じ言葉を放ってしまう。
『きみはいい子』という小説・映画では、「きみはいい子」と言ってあげることで全肯定してあげることがテーマだった。
親と子の断絶は一筋縄では改善しない。
当初はタイトルを「求愛」にするつもりだったというが、海辺で金魚鉢に飼われている金魚という皮肉と表面的な美観との違和感は、改題したことで端的な比喩となった。
解決などしない現実を日常として生きていく子どもたち、そして大人になっていく自分。
その複雑すぎる問題に、少しでも踏み入れてエンパシーを感じようとして、あの一見わかりにくいラストシーンとなったのだろう。
和歌山カレー事件にも想を得て、農薬かき氷事件として使うあたりも、冤罪の匂いの濃い事件に対する関心が窺える。
個人の問題が深く社会的問題に起因するという視点をもつ点でも、是枝映画のよき後継者と言えるだろう。
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