劇場公開日 2021年3月26日

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「等身大のリヒターの姿に心打たれる」SLEEP マックス・リヒターからの招待状 nagiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0等身大のリヒターの姿に心打たれる

2021年3月31日
iPhoneアプリから投稿

睡眠時の音楽体験の神秘性を殊更に強調されても困ると考えていたが、リヒター自身の芸術家としての苦労も語られていてよかったと思う。

むしろ観客のほうが《sleep》を大袈裟に神秘体験のように語ったり、勝手にアイデンティティと結びつけたりしていて、作品に対する思慮に欠けると感じる場面がしばしばあった。その点でリヒターは作品について必要以上に語ったりせず、等身大の姿をみせてくれている。

“天才作曲家”を冠せられているが、ひとりの人間として苦悩し、ながい忍耐のすえに大作を実現する、そのような脚色なき芸術家の姿にこそ、私たちは心打たれるのである。

nagi