「ボクシング映画は、5点満点中「4」になりやすい説」BLUE ブルー ソビエト蓮舫さんの映画レビュー(感想・評価)
ボクシング映画は、5点満点中「4」になりやすい説
ボクシング映画は、スポーツを題材にした作品の中でも、
とりわけ展開が一様で、設定が似通う部分が多い。
あるある設定で、先が見えやすい題材なわけだが、
同時にハズレも少なく、試合のシーンでガーっと盛り上がり、
観客の気持ちが熱くなる。
この作品も、そうしたあるある設定満載で、
パンチドランカーで、選手生命のかかる試合をする奴もいるし、
それを心配する彼女もいるし、
ボクシングを始めたきっかけは、モテたいからという単純な動機の奴もいるし、
ひたむきに努力するボクサーたちの姿に、
映画の観客は必ず、心の中で無意識に応援し始めるし、
演者の俳優は、ボクシングの練習を頑張ったんだねとねぎらいたくなるし、
ラストはちょっぴり、淋しい終わり方でフィニッシュする。
そんなあるある展開ながらも、一定以上の興奮と満足度があり、
ここのレビューでいう所の、「評価点4」が多くなりやすい。
5までの名作とまでは行かずとも、1とか2のハズレ的辛口評価にはならない、あの感じ。
この作品も、そういう「4」になりやすい作品の1つだろう。
他のボクシング作品と異なるのは、
終盤で主人公が試合をしない事と、
主人公がとてつもなく、弱い事だ。
つまり、敗者の側から見たボクシング映画という視点が多くあり、
「努力しても報われない事がある」という、
世のリアリティーを、観客に何度も何度もぶつけてくる、そういうタイプの作品だ。
多くの、凡人である「我々」に、何かを訴えかけてくる作品。
そういう事って日常的にあるよねと、
挫折ってあるよね、
でも努力を辞めたらそこまでなんだよねと、
何度も頷きたくなるシーンがいっぱい詰まっていた。
ひょんな動機からボクシングにハマっていく柄本時生には、
仕事を覚えたてだった、新人の頃の自分を思い出すし、
努力しても報われず、負け続ける松山ケンイチには、
人生ってそんなもんだよと、我が事のように抱擁したくなるし、
自分の可能性と才能を信じつつも、予期せぬ不幸に襲われながらも戦い続ける東出昌大には、
諦めるなという応援めいた想いと、辞めてもいいんだよという優しい想いとで、ぶつかり合って、
きっと観客は葛藤せざるをえなくなる。
社会の中で生きている自分が、
絶えず傷ついたり、嬉しかったり、悔しかったり、楽しかったりと、
その時感じた事や、考えた経験の時間があった人ほど、
作品が訴えかけてくる事の、内容や中身がわかるし、理解できるだろう。
ああ、これは、人間の内面を写し出す鏡のような映画なんだなと思った。
観て損はしない。安定の「4」的な作品だった。
良かった演者
柄本時生
東出昌大
松山ケンイチ