「うーん」キャラクター U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
うーん
いや…うーん。
色々と深読みも出来そうな本作なれど、とある方の名前をエンドロールに見た時に、この失望感の原因が分かったような気がした。
期待はしてたし、その期待を裏切らない展開でもあった。俳優陣は上手いし、世界観というかセットというか素晴らしい。架空の世界に説得力を与えるに足る諸々であった。
…途中までは。
犯人の出生とかの話が出てきた時から、俺の興味は明らかにトーンダウンした。
異常者の犯罪で良かったのに。
そんなありきたりな話をされたところで同情も納得もせんのではないかと、ひたすらに思う。
〆の台詞は「僕は誰だ?」
…いや、まぁ、そこなのかなぁ。
なんか「僕はダガーです」の方が綺麗にまとまるような気にもなるし、アイデンティティを消失してるって伏線的に活きていくような気がしてる。
偶然、目にした自分の代弁者。作中の自分に世間は熱狂し社会が動いていく。これほどまでに承認欲求が満たされる事なないのだろうと思う。
アレは自分だと主張し続けた結果の連続殺人なのであろう。
一方は純粋な表現者である。
漫画というジャンルではあるが、狂気をも飲み込む器があり、それが特殊な事だとも思わない。
よく「キャラが1人歩きする」とか「キャラに書かされる」なんて話をきく。自分が創作したキャラを紙面上で動かしてるのは作者なのだけれど、そこに絶えず問答があるのだろう。「どうする?」「次は何やる?」「コイツならばどんな行動をとるのか?」
憑依なんて言葉が合ってるのかどうかは分かんないのだけれど、その最たるものが最後のシーンなのであろう。
純粋な表現者は、キャラと自分の境目を消失しまったのであろう。
…とまあ、色々と面白そうな本作なれど、鑑賞後の充足感は薄い。
なんか、そのとある方が絡んでくると、いつも独りよがりな知恵比べを強要されてるような気がして萎える。
本作もそうだ。
俺はそんな事を求めて劇場には来ん。
だが、俳優陣も演出も素晴らしかった。
映画を見始めてから初めて、録音賞ってこういう事の為にあるのかと思った程だ。
皆様の声のボリュームが好き。
そのボリュームと距離感を感じさせてくれたのは、録音部なのだと思う。…違うのかな?
ラストに罪状を述べる男のボリュームだけはバカだったけど。正直、作品世界を崩壊させるレベルでバカだった。
俺はFukase氏の事を知らず、歌も聞いた事ないくらいだったから、そんなに違和感はないのだけれど、彼をよく知るファンの方なんかは、ちゃんと「両角」として見れたのだろうか。
最後の殺人事件を見るに、両角には計画性の一つもなくて、白昼に押し入って4人惨殺できるって事にものすっごく違和感を抱く。
大絶叫なんじゃないのかな?案外、恐怖で声も出ないものなんだろうか?いきなり柳葉包丁を持った男が、敷地の中に入ってきたらキョトンとかしちゃうものなのだろうか?
殺害した後に、構図を整える程の時間もあって…そんなにも日本の家族は孤立してるのだろうか?
日曜日の昼下がりなのかな、時間的には。
…ああいうものなのだろうか?
やっぱりかの人が絡むと消化不良の分量が増える。
■追記
あの松田洋治氏が辺見だと、どなたかのレビューにあって飛び上がる程驚いた。
1番予想だにしなかった。