「果たしてこの映画のキャラクターは見えたか」キャラクター Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
果たしてこの映画のキャラクターは見えたか
予告で興味を持ち観賞
「花束みたいな恋をした」のヒット御礼コメント
で菅田将暉がすごい頭しててインパクトあったんですが
この映画の役作りだったんだなと思いました
共演のFUKASEはセカオワをあんまり知りませんが
最近は海外で活動してたんでしたっけか
描くキャラが弱い漫画家志望がふと殺人現場と
殺人鬼に出会いそのキャラに魅入られ取りつかれる
ように書き始めた猟奇殺人の漫画がヒット
しかし次第にその漫画の模倣犯が現れ・・
というストーリー
さて感想としては
ゴア描写はなかなか度肝を抜かれます
そこはインパクト十分で良いのですが
結局登場人物が全体的に設定を活かせず
キャラクターが薄いままだった印象で
どういう行動を見せるかという部分に
あんまり興味が持てず結局俳優次第
といった感じに終始する映画に感じました
漫画家という職業を掘り下げるわけでもなく
刑事の深層心理も掘り下げるわけでもなく
殺人鬼の思う背景も掘り下げるわけでもなく
全体的に中途半端で弱い
まず漫画家の山城
冒頭持ち込み原稿に意見する編集者が
「人を殺したことがない漫画家が書くホラーでは
キャラクターが見えてこない」と言います
これがまず「はい?」という感じでした
じゃあ人を殺せばキャラクター出るんですかね?
取材や文献と制作サイドの協議を経てあくまで
「創作」として描かれるのが漫画だと思いますが
経験至上主義っていちばん素人臭い事をヒットメーカー
の編集さんが言うんだなと思ってしまいました
ひょっとしたら持ち込み原稿の対応が面倒くさくて
テキトーに言ってただけかもしれませんが猶更
ヒットメーカーがそんな塩対応するとは思えません
基本的に漫画家サイドの描写も一見原稿用紙に書く
アナログなものと近年のペンタブで書いていく
デジタルな手法と二つ出てくるのですが
これがそんなにストーリー上決定的に使われる
わけでもなく部屋に原稿を吊るすとかビジュアル的に
利用されているだけに感じました
取りつかれたように殺人鬼の漫画を書いて
それがヒットしたと言うんですが絵的には
惨殺シーンを上手に書いてあるのは売れる前と
変わらずどう面白くなったのかといった部分の
細かな表現は無いので本当にその「34」って漫画は
面白いのかと思ってしまいます
そして刑事の清田ら
小栗旬演じる清田は族あがりの破天荒刑事という
設定があるようですが別にそんな設定が強く
活かされる感じもなく
自白だけで犯人に仕立て上げてしまう警察が
無能すぎるだけで自分が怪しいと思った存在を
つけ狙って操作するとかは別に主要登場キャラ
なりに普通なレベルだと思いました
中村獅童の真壁も殺人現場で手袋やキャップを
マメにするシーンなどを細かに映すのですが
特にこういう性格だといった意味もなく
話が進んでいくので
何を表現したいのかわかりません
そしてそして殺人鬼の両角
FUKASEの演技は相当イッちゃっててイカしてます
なにせ主人公が魅入られた存在です
ですがこれがまた・・奥行きがないキャラです
とある背景から幸せそうな4人家族をつけ狙うという
条件で殺害を繰り返すのですが
故障したクルマから歩いて行き当たりばったり的に
会うとか山から歩いてきて見つけたキャンプしてる
4人家族とかどういういきさつでその家族を
特定したのかといった部分が一切触れられないので
これまたキャラが見えてきません
っていうか双子で4人家族になるという事実を
こいつはどこで知ったのでしょうか
4人家族を狙うというポリシーもどこまで
徹底してたのかわかりません
ラストの展開もひどい
主人公は漫画のとおりに反抗する殺人鬼両角を
おびき寄せるため妻の4人家族を「囮」にする
という作戦に出ますが山城や警察は正気でしょうか
妻の家族に殺されるかもしれないリスクを押し付ける
主人公には普通にドン引き
そして複数オートロックのマンションに住んでいる
のにあっさり侵入を許すとことかだったら
そんな設定作るなよと
管理人が殺されてるとかでいいでしょ
そして主人公も妻もそれなりに何度も
牛刀で何度も刺されるのにラストは回復して
ピンピンして子供も産んでるとか呆れます
だったら刺されなくてもいいだろと
漫画的な結末にもっていくなら最初から
両角をハメて一対一で対峙するとこにもっていく
とかするべきだったんじゃないでしょうか
でラストの「俺は誰だ」というセリフ
ごめんこっちが聞きたい
結局テーマががキャラクター性なのに
登場人物のキャラクター性を軽視
しているという矛盾した映画でした
漫画家へのリスペクトも大してありません
この映画の製作陣は漫画を書いてみるなり
人を殺してみるなりして経験からもっとリアルな
キャラクター描写をされてはいかがでしょうか
なまじっかビジュアルはインパクトがあるので
観て良かったと思った翌日くらいによくよく考えると
色々おかしなところが出てくる映画でした
ある意味成功なんかしら