「良作、されど傑作への壁は高く」キャラクター alphaさんの映画レビュー(感想・評価)
良作、されど傑作への壁は高く
エンターテイメント物としては及第点を大きく越える作品。原案・脚本が長崎氏、企画が川村氏とのことで、ある程度期待どおり。
但し、そういう意味では、良くも悪くも予想の範囲内におさまった作品。
作品として致命的なのが、登場人物のキャラクター性。
映画冒頭シーンで、菅田演じる売れない漫画家に編集者が、ホラーやサスペンスの作品は必ずフィクションなのだから犯人や登場人物達にリアリティを持たさせなければいけない、君の漫画の登場人物はリアリティに欠ける、と諭して原稿を突き返す。
この台詞をそのままこの作品に送りたい。
この作品の登場人物はひどく設定に素直な印象が否めず、いわばテンプレート化されたキャラクター達の寄せ集め。
菅田将暉演じる主人公はダボダボな古着っぽい服着た売れない漫画家。
いかにも小栗旬に演じさせたくなるような族上がりだけど根はいい奴な刑事。
Fukaseはアーティスト気質溢れる頭おかしい殺人鬼。
これらのキャラに何かオリジナリティやリアリティがあるかと問われれば、答えはNo。
Fukase演じる両角の背景や犯行動機も良く分からず、ただ宗教に影響受けて幸せそうな4人家族殺して回ってましたってだけ。なぜ漫画の模倣するようになったり、主人公に固執するのかは謎。特に知りたいとも思わない程に描写が希薄。
話も基本的に予想通りだし、後半の展開はちょっと違和感。それまで単独犯だった両角が急に手下使って刑事を襲わせて、小栗旬が殉職。フェードアウト気味だった主人公を話の中心に戻すための苦肉の策ですかね。犯人のキャラ崩れも感じて、正直興醒め。
キャラクターの造形がもっと深ければ傑作にもなったのかなと。どうして狂った殺人鬼が主人公のjokerがアカデミー賞をとれたのか考えてみるといい。
タイトルがタイトルだけに、キャラ性で減点することになるとは笑えない。
総評としては、エンタメとしては魅力十分だか、記憶に残るような傑作には遠く及ばない、そんな作品。
デートで何も決まってなければ、この映画観とけばいいって感じ。その日は楽しく過ごせるよ。数年後、デートで何観たかは覚えてないかもだけど。