「人一人ひとりの生い立ちを深く考える映画」キャラクター のんにこさんの映画レビュー(感想・評価)
人一人ひとりの生い立ちを深く考える映画
両角と山城、ほか登場人物のキャラクターを深く知りたくなる映画。そうなるように計算されて作られてるのか。
名もなく、戸籍もなく、学校も行かず、狭い世界が全てだった子ども時代。そしてある日突然、世間からその全てを奪われた両角。きっと自分の依って立つ場所がなく育ってきたんだろう。
彼の人生を、幸せを奪ったのは誰か?教祖、親、それとも世間?両角はどう感じていたのか。
『ボクは誰ですか?』と裁判で問うた両角。誰かになるために、殺人犯というキャラクターを作り上げるしかなかったのか。
山城に自分を漫画のキャラクターとして描いてもらったことで、初めて自分の存在を認めてもらったと、母から愛情をもらえたような、恋人から褒めてもらえたような、そんな感覚に陥ったのか…。
そして、漫画の通り殺人を犯すことで、2人で一つの作品を作り上げる一体感を持ったのか。
両角は4人家族は幸せ、というのは幻想だったと教祖や親を恨んでいる?それとも殺した家族を椅子や車に縛るという行為は、4人家族という幸せが離れないよう守るため?
両角の過去を、脳内を知りたくなる。
妻を守るために、しかし、咄嗟にではなく計画的に覚悟を決めて両角を刺した山城。しかしトドメを刺そうとした時の目は、両角と同じ物が宿っていた。
殺人に快感を感じてしまった?
両角を描くうちに、共感性の高い山城は、両角の狂気が乗り移ってきたのか。
殺人を想像して描くうちに、殺人への関心が高まっていたのか。
自分の描いたものを完成させる快感もあった?
山城は今後どんな人生歩むのか。
漫画は描き続けるのか。病院で清田の似顔絵描いたのは、彼をキャラクターに漫画を描こうという意思なのか。
いや、その前に果たして妻と子どもは殺されてしまうのか。
山城の今後をつい考えてしまう。
清田の人生、辺見の生い立ち、殺された一家はどんな家庭だったのか。遺族は…。見終わって、そこから知りたくなる、謎が始まるような映画。
この殺人に共感して、また次の殺人者が出てきてしまいそうな、両角が捕まったら終わりではない、辺見が捕まっても終わらない、世の中の不条理だ、とでも言いたげなラスト。
でも、一方で正義や人情もたくさん描かれていて、温かい気持ちにもなる。
世の中って、不条理で狂気に満ちてる。
世の中って、温かい。
両方の気持ちでぐちゃぐちゃ。
あー、もう見た後、ずっと考え続けてしまう…。他のこと手につかない…。
観賞後、鬱々と考えながら歩いていると、芸人トリオ、3時のヒロインがテレビ撮影しているところに遭遇。
何だか救われた明るい気分になれました。
ありがとうございました!