「【映画のタイトル】」サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【映画のタイトル】
この作品は、観終わった後に、タイトルの意味を再考することになる。
ルーの助力のかいあって、薬物依存から脱したルーベンが、今度は、聴覚障害に陥り、ルーの助言や、施設のスタッフなどの協力もあってだが、絶望から立ち直っていく姿に胸が熱くなる。
演出も、観る側に、聴覚障害者の感覚を知らしめるようにしていて胸が苦しくなる。
前に、人間の耳は非常に微妙な調整を知らず知らずのうちに行っているという、人体の不思議をテーマにしたテレビ番組を観たことがあった。
騒音の程度にもよるが、聞きたいものを優先して聞くことが出来るような調整を行っているという話を含んでいた。
ただ、これは、聴覚という耳に関するところではなくて、聴覚をつかさどる脳の機能がそうさせているということだったように思う。
仕事に集中して、周りの音が気にならなくなるのも、そのうちの一つかもしれない。
(以下ネタバレ)
この作品は、ルーベンが立ち直る姿に心が打たれるが、個人的に衝撃だったのが、ルーベンがインプラント装着後に聞こえる音の感じた、金属音の集合体のようだったことだ。
この映画のタイトルは、実は、このことだったのではないかと考えた。
技術が進歩し、改善されると、こうしたことは解消されるのか、インプラント装着後に医師が、数週間で慣れると言っていたと思うが、時間が解決することができるのか、多少なりとも、ずっと金属音的な感覚は残るのか分からないけれども、聴覚障害の人は、こうしたことでも悩みを抱えるのだと認識させられた。
この作品は、敢えて、こうあるべきだとか、これだという答えを示してはいない。
その代わり、当事者が、様々な葛藤の末、いかなるチョイスをしようと、聴力が普通である僕達にも理解し、考え、そうした選択を、なんであれ、受け入れて欲しいというメッセージなのではないかと思った。
技術が進歩すれば、人が陥りがちな、簡単に、誰もが、それを利用すれば良いじゃないか。そして、健常者のように生活すれば良いじゃないか。それが、社会の負担を減らすということだ…みたいな近視眼的考え方に一石も投じていると思うのだ。