劇場公開日 2021年3月5日

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「韓国作品の多くは家族の圧が強すぎる」野球少女 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0韓国作品の多くは家族の圧が強すぎる

2022年5月4日
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鑑賞方法:DVD/BD

幸せ

初鑑賞

韓国プロ野球でプロになれる実力がない韓国人女性が諦めずプロを目指して野球を続ける話
主人公は高校の野球部の女子選手スイン
ドラフトでは指名されず母からは諦めることを勧められるが絶対に諦めないスイン
野球部のパク監督の肝入りで採用されたプロ経験がないキムコーチの指導で130キロの速球に加えナックルを投げはじめたスイン
母の世話で就職したものの途中でいなくなりやっぱり野球
プロチームのトライアウトに挑戦するスイン

スイン役のイ・ジュヨンはなんとなくだが平手友梨奈からエグみを全て取り払った感がある
6月に公開される是枝監督の映画にソンガンホやペドゥナと一緒に出演しているので今から楽しみである
ちなみにスインの母親役は広岡由里子に似ていた

『野球少女』に限らず野球映画は野球のルールがわからなくても楽しめる内容になっているのが普通だ
なぜなら野球が分からない人にも観に来てもらいたいからだ

内容が内容だけにこの野球映画に陽気さが乏しい
野球ものはではないが映画化もされた原秀則の漫画作品『冬物語』のような雰囲気を醸し出している

選りすぐりの男たちに混じって女がプロ野球の仲間入りするというのは現実的に叶わぬ夢の話
残酷なまでの実力社会に男女機会均等なんて瞬時に跳ね返される
『野球狂の詩』の水原勇気など女子プロ野球選手が登場する漫画やアニメは少なからずあるが所詮架空の話だ

ナックルに飛びつくのはありがちな発想だ
だがそれでプロで通用するかといえば現実は厳しい
この作品でのナックルの投球フォームは大成したナックルボーラーと全く違う
韓国映画は国際的に評価が高いが野球にそこそこ知識がある人からすれば大チョンボといえる
ナックルボールは特殊な変化球
握りだけでなく投げ方も独特
チェンジアップやカーブなどと違い本来速球と交えて緩急をつけるために投げるような球ではない
KBOでもNPBでもナックルボーラーとして大成した投手を聞いたことがない
本場アメリカ大リーグでさえニークロ氏やウェイクフィールド氏などいることはいるが滅多にいない
監督はナックルのことをよく知らなかった可能性がある
彼らの投球フォームはYouTubeでも見れるはずだから参考にしてほしかった

KBOは新人採用のシステムがNPBとは違うのでドラフト会議で指名されなくてもドラフト外でプロ野球選手になれるのかもしれない
NPBも昔はそうだった

結局なんやかんやでスインのプロ野球選手になる夢はめでたくも叶う訳だが

最初から最後まで淡々と平坦に話が進んでいく
プロになったからといって盛り上がらない
いかにもミニシアター系でエンターテイメント性に欠ける
韓国映画を手放しに称賛し日本映画を貶める輩には満足かもしれないがこれは薄味で物足りない
でも決して悪くはない

韓国は儒教の教えが根強く家族主義の印象がまだまだ強い
韓国には家族愛の日という休日があると聞く
韓流ドラマや韓国映画を観るとまず感じることは家族の圧は強すぎることだ
ファミリー志向ならアメリカだって負けてないが個人の尊重をするせいか圧は強くない
日本の作品の多くに観られる家族風景が当たり前になっているので韓国のそれはとてもウザく鬱陶しく軽い拒否反応を示してしまうのだ

それでも作品としては星3つはあげたい

野川新栄