「アル・カポネの晩年。」カポネ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
アル・カポネの晩年。
2020年(アメリカ/カナダ)監督:ジョシュ・トランク
トム・ハーディと言えば、かなり屈折した知性の持ち主、顔の見えない役を好む傾向がある(?)
そのトムがギャングとして世界一有名なアル・カポネに挑んだ。
刑期を終えてフロリダの邸宅に帰った彼の、1947年に亡くなる直前までの、カポネの最晩年を描いている。
梅毒の悪化による認知症の重いカポネは、「アンタッチャブル」でエリオット・ネスと張り合った「世界一有名なギャングスター」の面影は皆無だ。
過去の悪行がフラッシュバックして蘇り、悪夢にうなされる。
失禁するシーンが2回もあって、哀れなものである。
映画の中のシーンも彼の悪夢なのか現実なのか区別がつかない事が多い。
観客もカポネの意識混濁に付き合わされて、困ったことになる。
脳梗塞の発作の後は言葉も不自由になり、ますますカポネが正気なのか?
本当に異常なのか半信半疑になる。
ガウンを羽織った下半身はオムツに素足にスリッパ。
トムの認知症患者・成り切り演技は、いつもながら天晴れ。
喋れない制約すら、目ヂカラにモノを言わせて楽しんでいるようだ。
今、予告編を見た。
これは誇大広告だわ(笑)予告編より全然面白くない。
予告編を裏切る地味な映画。
ダイナミックなアクションなんかないので期待しないでほしい。
屋敷の外ではFBIが監視して盗聴を仕掛けている。
目的は、1000万ドルをカポネが隠しているとの情報だ。
この件も本人すら忘れてるふりなので、乞うご期待・・・は、しないで(笑)?!
トム・ハーディは毎日4時間かけて特殊メイクを施したと聞く。
素顔を見せない役の映画「ダンケルク」「マッドマックス怒りのデス・ロード」。
「ダークナイト・ライジング」に至っては被り物で顔は全く見えない。
4時間の特殊メイクにしては、「素顔と変わらないじゃないか?」と言いたくなる。
実物のアル・カポネには似せてない。
顔の傷(スカーフェイス)や、梅毒による皮膚の爛れ、皺禿げ上がった額の他は、トムの素顔とほとんど変わらないじゃない!
シカゴを牛耳ったカポネが晩年を暮らしたのはフロリダの広大なお屋敷。
主治医を「ツインピークス」のカイル・マクラクランが演じている。
彼も隠し金の場所を聞きたそうとするが・・。
それにしても450件の殺人事件に関与したのに、逮捕容疑は脱税と酒の密売(禁酒法時代です)
10年足らずの刑期で、出所。頭のいい男だ。
悪夢に苦しむ寂しい晩年はある意味で自業自得でしょうね。