「評価は割れるところだが、若き監督の再起を素直に喜びたい」カポネ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
評価は割れるところだが、若き監督の再起を素直に喜びたい
ジョシュ・トランク監督の名を久々に見た。『クロニクル』が絶賛されながらも、『ファンタスティック4』でスタジオ側と衝突し、作品そのものも酷評されてしまった彼。もはや再起は無理と思っていたが、全く異なる作風でのカムバックを嬉しく思う。その真価はいかに。ある種のとっつきにくさはあるにせよ、映画が進むごとに「なるほど」と感じた。全然、嫌いではない。いざ映画化しようと思えば生誕から死までのあらゆる瞬間が素材となり得る「アル・カポネ」という怪物を、あえて晩年の一期間という額縁の中にギュッと凝縮させて描く。そのアイディアと視点は面白い。正気と狂気。混濁する記憶の淵に隠されたもの。怪演なのか熱演なのか、それともこれは笑うところなのか、判別つかないほどぶっ飛んだトム・ハーディの演技。私にはこれがハリウッドで満身創痍となったトランク監督の精神世界そのものに思えてならなかった・・・と言うのは極論すぎるだろうか。
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