劇場公開日 2021年7月30日

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「顔と言葉を奪われた“袋を被る人々”」返校 言葉が消えた日 015🎬さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5顔と言葉を奪われた“袋を被る人々”

2021年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

元々は台湾のホラゲのようです。『返校 Detention』。
原作のゲームは未プレイですが、所見でも十分にホラゲっぽい要素は堪能できます。
廃校に現れる謎の生命体とか。教室の入り口や窓に張り巡らされた無数のお札とか。自分の名前が書かれた墓とか。
ただ、導入部分の『読書部』の成り立ちから始まって、いきなりホラゲのターンになるので、心臓が悪い方はちょっと構えておいた方がいいです。

導入部↓
独裁政権により言論統制されてた時代。
ウェイ・ジョンティンは教師や友人達と一緒に政府に禁じられた書物を読む『読書部』に所属していた。
『読書部』では政府により発禁本とされた本の朗読や書き写しが日常的に行われていた。
ある日、ウェイは校内有数の模範生であり、片想いの感情を抱いていた相手:ファン・レイシンと廊下でぶつかってしまう。
床に散らばる鞄の中身。
それを拾い上げる際に、発禁本を書き写したノートを見つけてしまうファン。
ウェイはファンが自分のことを政府に密告するのでは、と恐れるが、ファンは素知らぬふりをして去っていく。

予告編等の情報からもわかるとおり、この『読書部』は登場人物の誰かによって告発され、何人かの所属者達が政府によって命を落とすことになりますが、その辺の種明かしが告発者による追想という形で描かれます。
そしてこの追想を、ドラマパートで描き切るのではなく、ホラーパートで消化する形となっている。

ホラゲ原作として触れるのであれば、良作だと思います。
ただし人間ドラマや歴史ものが好きな人にとっては、多少物足りなく感じるところがあるかもです。

全体的に三部構成となっていて
1幕 謎の廃校を逃げ回るホラーパート
2幕 告発者が何故『読書部』を告発するに至ったかを掘り下げるドラマパート
3幕 廃校が閉じるまで&生き延びた人が果たした約束について(ホラーパート&ドラマパート)
こんな感じです。

全体的に人間描写が非常に丁寧な作品と思いましたが、冒頭の『読書部』の日常→廃校で謎の生命体に追いかけられるまでの流れが結構強引なので、それを乗り切ればまあ観やすいです。
ホラーパートの方では“袋を被った状態で死んでいる人”の姿を何人も見かけますが、ラストまで辿り着いて、ああ、そういうことかと納得。

角川ホラー映画が好きな人、ホラゲが好きな人は十分に楽しめる映画だと思います。

BONNA