「旧友と2人でキャンプのリアリティ」オールド・ジョイ sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
旧友と2人でキャンプのリアリティ
実際に旧友と2人でキャンプに行ったことはないのだが、山歩きを誘ったことはある。
結果的には実現しなかったが、この映画に流れる空気が、それが実現していたとしたらこんな感じだったかもというリアリティを感じさせた。
旧友同士、過去ではリアルタイムで共通の体験があり、それをもとに壁なしにやりとりできたのだろうが、今は、離れてそれぞれの暮らしを積み重ねているので、当然ピッタリとはいかない。
マークは、ボルボに乗って一軒家を持ち、もうすぐ子どもも産まれる。それに対して、カートはどうやら安定した仕事についておらず、夜間学校に行ってみたという発言も出てくる。
そんな2人が向かうキャンプ。目的地は、カートがマークに勧める場所なのだが、車はマークのボルボで、行き先もカートが結局うろ覚えだったので、1日目にはたどり着けない。地図を広げて、なんとかしようとするマークに対して、我関せずと、タバコを吸っているカート。
そりゃマークもちょっとはカチンとくるでしょうと思いきや、結構我慢強いのがマーク。
でも、そういったマークの様子から、壁を感じてしまったカートが、思わず本音をポロリでちょっと気まずい雰囲気に…。
ただし、2人は無理に過去の出来事を振り返って距離を縮めようとするのではなく、言葉を多く交わさずとも、互いにそこで寄り添おうとする。
ライカートらしく、決定的な何かは起こらず、淡々と描写を積み重ねることで、観ている者の内面に、登場人物たちの心情を描き出させていくタイプの作品。
当時のアメリカの社会状況について知識も不足している自分にとっては、ちょっとつかみにくいところもあったが、80分に満たない中で描かれたものから、色々とイメージを膨らませるのは、とても楽しい作業だった。
余談だが、アメリカにも温泉があるんだなということに驚いた。加えて、車を走らせている場面は、まるでBS-TBSの「ヒロシのぼっちキャンプ」だったが、あの番組を心地良く思うのは、ライカートの映画が結構好みっていうのと通じるものがあるのかもしれないと思った。
あと、この映画にもルーシー(監督の犬)が出てくるのだが、改めて賢い犬だなぁと思った。