「ブラック味が割と強い、ライカートのデビュー作」リバー・オブ・グラス sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
ブラック味が割と強い、ライカートのデビュー作
ライカートの長編デビュー作らしい。
舞台は、自分が生まれ育ったマイアミ。ライカートの実際の父母も警察関係者だったようなので、主人公の父も刑事という設定。
デビュー作ということで、満を持して勝手知ったるその二つを手堅く据えつつ、その分伸び伸びとストーリーを膨らませていったのではないかと想像するが、結果的にとても面白い作品になっていると思う。
ネタバレを避けるが、父の落とした拳銃の数奇な行く末や、まるっきりの偶然だったはずの出来事が、いつの間にか全く違った意味を持って結びついてしまう展開がよくできている。
想像力豊かなコージーの脳内では、ドラマチックな逃避行だったはずなのに、ズレてズレて見事に陳腐になっていく様子は哀れであるが、同時に、観ているこちら側を「そんなに大袈裟なことは簡単には起きない」と、ホッとさせもする。
だが、映画冒頭から様々に繰り返し写真や言葉で提示されるように、些細なことの積み重ねが、結果として取り返しのつかない殺人等のきっかけにつながってしまうこともちょこちょこ明示され、「そうした大袈裟なことは、案外簡単におきる可能性もある」ということが同時に伝わってくる。
相手への攻撃を容易に行える「銃」というものの存在について問いかけるとともに、自分の人生を変えようとするならば、流されたままではなく、自分の意志で線を越える必要があることを、ブラックな味付けで描いた作品と受け取った。
主人公のコージーと一緒に逃げるリーの情けない僕ちゃんな感じが、自分には微笑ましかった。
そして、コージーの父が、物をなくした時の、泣きたくなるような状況をとても上手に表現していて好印象。まあ、あれだけ無頓着ならそうなるよねぇ…。プロを目指していたというドラムソロにはシビれた。
全編通して、ライカート監督の張り切り具合が伝わってくる一作。自分は、一番笑えた。