「US公開時に観たかった!」リバー・オブ・グラス osmtさんの映画レビュー(感想・評価)
US公開時に観たかった!
うーん。けっこう良かったけど、もう25年も経つと今の気分では無かったかな。グランジがリアルだった95年当時に観たかった。当時のリアルタイム鑑賞だと随分ハマったと思う。
(かと言って全体的にグランジの匂いが漂っているだけで、ニルヴァーナなどのグランジ系の音楽が流れる訳ではない)
16mm特有の少し粗い感じで映し出されるフロリダの陽光が、この作品の世界観と上手く合っていた。
予告編があまりにも良すぎて、期待値も上がってしまったが、もう少しクライムムービー(”Bonnie & Clyde”とか)のパロディ的な要素を入れた方が間抜け感も増幅して良かったかも。
もし同じストーリーでコーエン兄弟が作ってたら、もっと救いようが無い程のバカっぽい展開になったと思うが、あれだけ間抜けなプロットにも関わらず安易に「おバカ」な方向には舵を切らないのが、この人の独自のセンスのようだ。
そのプロットの方も辻褄の合わない部分もあったりして(本当は殺してないのに急にパニックになって車で走り去るとか)イマイチ腑に落ちない所もあったりもしたが、ラストの急展開の終わり方は良かったと思う。
音楽の方も全編にわたり流れるジャズ(特に主人公の父親役のドラムソロ!)といい、ラストのエンドロールで流れるSammyといい、音楽好きにとっては、まさに「わかってるなあ」といった感じ。
蓮實重彦が語っていた「ショットが撮れる監督」というのも間違いない。
素晴らしいショットが多過ぎて、アレを繋げれば、そりゃあ予告編は傑作の予感に満ち溢れるに決まってる。
その予告編を観て勝手に想像していた「ロードムービー × 勝手にしやがれ ÷ ジョン・カサヴェテス=本作」といったイメージとは実際ちょっと違ってはいたけど、とはいえ、やはり、ヌーヴェル・ヴァーグだったりカサヴェテスあたりが好きな人にとっては、間違いなくお勧めの一本の一つだ。