浅草キッドのレビュー・感想・評価
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・フランス座
タランティーノのワンアポ見た後にこの作品を見たので、
ラストのシーン、嗚咽しながら泣いてしまいました。
シャロンテートが映画の中に生きていたように、
あの頃のフランス座も永遠に映画の中にありました!
映画の魔法!
ありがとう劇団ひとり!
余談:
現在20歳。この映画を見て初めてツービートのネタを見ました。立川談志もそうだと思いますが、毒っていつの時代に見ても古くならないんですね。中学生の社会の時間に教科書に載っている風刺画を見るのが好きでした。
私は女ですが、女性蔑視の言葉って意外と好きなんです。ついつい笑ってしまうんです。
というか笑える余裕くらい持ちたいものです。
「あんま」とか「めくら」とか「つんぼ」とか「びっこひく」だとか
昔の文学や映画にはよく出てくる言葉も、なんか魅力的に感じてしまうんです。
勿論、馬鹿にしたり嘲笑も含まれた呼び名ですが、それ以上に、社会の中で一つの括りというか、
社会の一員を担っている大切な人種だよ、みたいな感じがして
健康的な差別というか
そんな人たちがいて社会だよっていう気がして
だから今の時代に差別用語とか蔑視発言と言われている言葉聞くと安心するというか
まとまりませんが、ただ一つ私が明確に言語化できることは、
ホームレスのいない街は信用できない
という事です。
この事とお笑い芸人(道化人)について書きたかったのですが長くなりそうなのでやめます。
ツービートのネタも、北野武監督の作品も
そういう事を勝手に思い起こしてしまう、大好きなものです。
めちゃくちゃ良い!!!
タップダンスのシーンが素敵。
柳楽くん最高。
大泉洋最高。
劇団ひとり凄い。
全部注ぎ込んだんだろうな、と思いました。
哀しいことも、やり切れないことも、見栄張ってでも笑いに変えて、、めちゃかっこいい人間をみました。
たけし愛、芸人愛が溢れた、いい作品 ひとり監督いけます
Netflix映画の 浅草キッド 見終わり
昔地上波のドラマだったのは見てたり
歌の浅草キッドの曲も好きで、流れるだけで涙が出てきたり、
湯ヶ島キッド読んだことあったりで話の内容は知ってましたが、
ひとり監督.脚本(劇団ひとり)でどうなのかなって思ったけど、
客観的みてもに破綻もなく、伏線や見せ方のテクニックが上手なシナリオで
たけし愛、芸人愛が溢れた、いい作品でした
前半はちょっとどこにもっていくのか、だれ視点で進めるのかちょっと戸惑ったけど、
たけしと深見師匠、もしくは深見師匠がグイグイ出てくるやんって 笑
後半はここまでかなって思ってたとこに、さらに重ねてきてて、ああ、いいシナリオにまとめたなって思いました
数分だったけど、現代のたけしが本物に見間違えるくらい、柳楽優弥寄せてた
劇団ひとりとか松村邦洋がテクニックアドバイスを行ったとか(スタッフクレジット)
ネトフリのあの時代の浅草CG再現はすごかったけど、もう少しあの時代の浅草の雰囲気を感じるカットが欲しかったなあ、予算の問題かあえて演出に必要ないとしたのかわからないけど
あと大泉さん、上手に無難に要求されてることに答えてた
個人的には、一瞬いつもの大泉さんを突き抜けた感触あり、
昔、ある方に「大泉は森繫久彌になる逸材」って言われてたのを思い出しました
星4リピありです
どんだけ泣かす気だバカヤロー!
いやー、ちょっと想像の遥か上を行く名作でした。
早くも2022年暫定ベストと言っていいかも。
それくらい、ストレートに心に刺さる映画でした。
実在の話をベースにしたビートたけしの自叙伝がこんなに面白いとは。
痛いくらい人間臭い登場人物達と、70年代浅草のノスタルジックな景観をバックにしたドラマが素晴らしかった。
そして柳楽優弥演じるたけしの本物っぷり、これは誰もが認めざるを得ないところでしょう。
外見や声のモノマネではなく、精神性まで本人になりきっての演技は脅威的でした。
大泉洋演じる不器用すぎる師匠との師弟関係には涙を禁じ得ませんでした。
笑って泣いて、あっという間の2時間。
見終えた後、世界がちょっと違って見えました。
これは劇場で見たかった。
そう心から思える程の素晴らしい作品。
夢追い人達の青春ドラマ、絶対に見るべし!!
期待せずに見たら泣けた
正直、劇団ひとりが監督かぁ、大したことないでしょと思い、軽い気持ちで見始めました。
開始すぐに柳楽優弥のたけしに見入ってしまい、いい意味で裏切られた。
ラストシーンが特によかった。
劇団ひとり、監督の才能すごい!
2時間分の面白さ
この映画は2時間が30分に感じられた!みたいな面白さではないが、2時間飽きることなく楽しめる。
最後の終わり方は他にやりようがあったのではと思う部分もあるが、全体的にクオリティが高い。
素晴らしい師弟関係が物語の軸となっており、こういう関係が少なくなっていることに寂しさを覚える。
師弟愛
お互いの才能に惚れ込み
ぎりぎりのところで生きながら芸を磨き
同じところを目指す
師弟愛の物語であると同時に
今は頂点までのぼりつめたたけしさんの
浅草時代の青春の物語。
日本人の誰もがよく知っている人を
演じるのは難しかっただろうと思いますが
若い頃のたけしさんが放っていた
何ともいえない魅力が感じられたし
本人かと見間違う特殊メイクや立ち居振る舞いも
良かったです。
たけしの癖を誇張し過ぎずコピーしながら表現する柳楽優弥と、時代に取...
たけしの癖を誇張し過ぎずコピーしながら表現する柳楽優弥と、時代に取り残されていく師匠の悲哀大泉洋がいい。そして、歌手志望のストリッパーを演じる門脇麦もいい
大御所にもやっぱりこういう時代があったんだなぁとしみじみ
大御所にも下積み時代があって、そこでもがいた先に今の地位があるんだなぁと、当たり前なことだとも思うけど、こうやって映像にされて分かることが沢山あった。
作品としても面白い(特に柳楽さんはご本人かと思うくらいよく特徴をとらえられていた)けど、泥臭くやり抜くことの大切さみたいなマインドの部分で心を揺さぶられた。
これからもいろいろな分野へ精力的に挑戦される姿に注目していきたいと思う。
鈴木保奈美が男
鈴木保奈美が男に見えた。いやきっぷの良さがじゃなくて見た目そのものが。
もう見るに耐えないというかいたたまれない。
宣伝に吸い寄せられた。本作に関するYouTubeやラジオに押し寄せる宣伝がすごくてこれでは見ざるを得ない。本作のためにNetflixに入会したようなもの。それだけ期待が頂点に達していたためいざ見てみると期待はずれに感じた。
ビートたけしの特殊メイクもアップで見ると気持ち悪かった。
大泉洋熱演
演技よし、演出よし、構成よし
そもそも感情移入が出来る演技であり、素晴らしい演技であることを前提として、大泉洋さんの演技からは
「深見さんがどのような感情なのか」について、こちら(見ている側)から推し量った、想像通りの演技だけでなく、演技からその感情を滲み出させるような演技
があり、
ところどころ演出として「やってる」ように思わせかねない演出があるものの、全体を包み込む雰囲気や大泉洋さんの人柄などによって、それがレトロ感に落とし込まれており、コミカルでとても見やすい映画になっていた。
メモ
ビートたけしが描く、『浅草キッド』を作っているため、(ここからは推察だが)師匠の部分には監督の「自死ではないのか」という疑問を感じた。
Creepy Nutsの2人の演技が浮いている。「現代」っぽさがあり、逆説的にこの映画に通底する「古き良き」を感じる。
最後の笑い合うシーンは、ビートたけしはもっと偏屈に笑ったほうが好き
笑われるんじゃない、笑わせんだよ
ビートたけしの自伝的小説の映画化
劇団ひとりの脚本監督、大泉洋柳楽優弥が主演となれば、話題性はあるが、それほど期待せず
ただ思った以上に面白く泣き笑いのちょうど良い映画だと感じた
劇団ひとりは脚本・演出面で今後も期待できる人になってきている気がする。
一番良い演出は、ラストのフランス座を後年のビートたけしがその当時の思い出を入れ込みながら、歩いて行くシーン。ここに対する哀愁がすごいし、それを感じさせるそこまでの積み上げもすごい。
自分の原点を思い出させる作品
滲みでる「北野武愛」
芸の世界で天下を取った男。その「ひょっとするとひょっとする」才能を育て上げた幻の浅草芸人。最近ではめっきり聞かなくなった芸の世界での師弟関係が熱く描かれる。
タケシを演じる柳楽優弥は、憑依芸とすら思えるほどに北野武。演技なのかモノマネなのか…と、そのギリギリのラインの台詞回しに若干の毛恥ずかしさは感じるが、そのイタコっぷりが逆に深見千三郎という人間の「芸人」としての凄味を彩る。
「笑われるな、笑わせろ」
「芸人だったらいつでもボケろ」
自分の信じる道で、ひたすら真剣に人を笑わせる浅草の師匠の姿は只々格好良く、その背中をしっかりと追う弟子のタップステップが胸を打つ。
そんな師弟の愛はもちろんのこと、やれるかどうかギリギリの関係性を演じた門脇麦も流石。そして何より、自らの「北野武愛」を描き切った劇団ひとり監督に拍手。原作を愛する第三者がしっかりと描き、巨匠本人が本作に立ち入らなかったからこそ「浅草キッド」がエンターテイメントとして成立したのだと思う。
あとは主題歌「浅草キッド」の早期アナログレコード再販と、本作の映画館上映を祈るばかり。
力をもらった
浅草フランス座とビート武がつながっていると知らなかった。こういう知っているようで知らない世界を見せてくれる映画は面白い。
劇団ひとりが監督・脚本しているのもすごい。多少かなりキレイに書いているところもあるだろうが。。
柳楽優弥は演技さすがすごいなぁ。そこにビートたけしがいた。
内容については、純粋に刺激になった。なにか飛び出ている人は自分からちゃんと飛び出している。自分は何者か。意識して生きていかないと。
劇団ひとりの愛が優しさに化ける空気、新年1発目から滝のように泣いた、、
ビートたけしの半生ではなく、彼の血となり骨となった師匠から浴びた「生き様」をありありと魅せられた気がした。劇団ひとりの愛と暖かさが涙になって止まらなかった。
もともと劇団ひとりの『青天の霹靂』を観たとき、もう涙が止まらなくて「この人の作品は、なんて人柄で心を突き動かすのか…」と衝撃を受けた。だから、正直周りの評判を聞いて、これ絶対泣くやつ、とは思っていた。だが、その何倍も泣いた…。その理由はやはりビートたけしの凄みも去ることながら、師匠と共に磨かれた「天才の片鱗」が透けることが大きい。栄光と影…変わりゆく時代。最後まで舞台芸人で居続けようとした師匠と、天才・たけしがそう在る為に選んだ、テレビというフィールド。その対比の中に変わらない人の関係性が心を強く打つ。
熱心に研究し、モノマネにならないように意識されたビートたけしは柳楽優弥にしか出せない香り。その一方、舞台一本が故に資料もほぼ残っていなかったという深見千三郎は、大泉洋のユーモアによって色づいている。そして何より門脇麦。ドラマ「火花」然り、彼女がミューズになることにただならぬ安らぎを覚える。バレエ経験からくる堪能なダンスにほれぼれ…。しかも、香る程度の役回りだから何ともニクい。あと、『青天の霹靂』に出ていた風間杜夫が出てきたときは凄く嬉しかった。思わず声が出るほど。笑
舞台からテレビに変わったあの頃のように、テレビがメディアの第一線ではなくなる日も近い。それをNETFLIXのコンテンツでやるのだから、そこはなんとも皮肉の効いた話。だが、こうしていつかテレビも懐かしくなる日が来るような気もする。だからこそ、師匠のように最後まで全うする人もいれば、自分の生き様が表現できる場を生き続けるたけしのような人もいる。そしてそこにはきっと、脈々と受け継がれているものがあるのだと思う。なぜなら、「笑わせる人」芸人の本質は変わらないのだから。
情報7daysニュースキャスターでビートたけしはこの作品を「感動したけど、やっぱドラマだよね」と評していた。「こんなものじゃない、もっと酷いこともあった」と。彼はどんな世界を見てきたのだろうか。改めて凄みを感じると共に、死に物狂いで追えば叶うと信じきってみる事がいかに難しくてカッコいいかに気づいた。いい映画で2022年を初められてホントに良かった。
とんでもないものを観てしまった
笑われるんじゃねぇぞ、笑わせるんだ
客になんぞ媚びることなく崇高に、芸人として生きることを誇りとした深見師匠。
原作も未読でマルチに活躍される今のたけしさんしか知らなかったので、こんなお師匠がいらっしゃったなんて初めて知りました。
影響力のあった、今は亡き方を演じるって本当に重圧なのだろうと思うけど、まだまだ現役で活躍する方を自分が演じるって重圧どころじゃないと思う。
それなのに大泉さんと柳楽さん、もうご本人ですかという演技。天晴れとしか言いようがない。特に現在のたけしさん役を柳楽さんがやっていらっしゃるというのは後から知り、ハァァ!と思わず言ってしまいました。どうりでご本人の名前がクレジットされないわけです。お陰で2時間があっという間に過ぎるくらい没入してしまいました。
配役、脚本、主題歌など全てがプラスに働いたのは劇団ひとりさんの監督としての素質とたけしさん愛あってのことかもしれない。でなければこんなに心動かされてないです。
でも不思議と鑑賞後はずるずる引きずらないさっぱりとした感覚なのはなんでしょう、今も芸に生きるたけしさんを描いてるのに湿っぽくなってどうする、というようなひとりさんの芸人魂を勝手に感じてしまいました。
浅草キッドと主題歌聴きながら原作読んでみようかな。
映画館で公開せよそれが筋だろ?
映画館で予告をやっているくせに映画館では観ることができないなんてそれでも映画だというのか?フィルムで撮影しなくなってサイズもほぼ同じになった今日における映画の定義とは24pであるかどうかだけなの?
評判どおりすごく良く出来ているし浅草の東洋館(フランス座)には少し思い出があり門脇麦と柳楽優弥の別れの場面にはやられたけれどストリップなのに裸を出せないジレンマは決定的にマイナスであまりに優等生過ぎて視聴中に2度も宅配のピンポンに中断されたこともあり映画館の暗闇にこだわっている自分としてはやるせない。同じテーマで「浅草キッド」を主題歌に戴いた「火花」の方が総合点では負けても何カ所かにぐっとくる映画的感動があって10倍好きである。
マーチン・スコセッシが「アイリッシュマン」を撮った時もなんでNETFLIXなの裏切者と警戒したが今度はいよいよとどめを刺しに来ている。映画館をつぶしてはいけないでしょお得意のドラマと映画で棲み分けすれば良いではないか、暗闇に一定時間拘束されるでかいスクリーンが絶対に必要なのである。
芸人だよ、バカ野郎ー!
新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
新年初投稿はこの作品にしようと思ってました。
浅草芸能の雰囲気が、正月に見るのにぴったりな気がしたからです。
であると同時に、話題のNetflix邦画。
題材は、ビートたけし誕生秘話。
映画ファン、お笑いファン、エンタメファンなら興味引かずにはいられない。
今や芸能界の“ビッグボス”となったビートたけし。
勿論ビートたけしの事は知らぬ訳無いが、自分が知るビートたけしはほんの一表情。
まだまだ若い素人の頃、浅草のストリップ劇場“フランス座”でエレベーター・ボーイをしていたたけし。
そんな彼はある芸人に憧れていた。
その芸人とは、深見千三郎。
たけしは勿論、東八郎や萩本欽一の師匠であるという浅草芸人。
にも関わらず、全く知らなかった。
当然かもしれない。
世代の事もあるし、それにTV出演は全くと言っていいほど無く、舞台に立って笑わせる事にこだわり続け、浅草界隈でしかその名や存在が知られなかった“幻の浅草芸人”。
が、芸人たちへの影響力は多大なもので、彼を師と仰ぐ芸人は先に挙げた人たち以外にも。
たけしは深見の“最後の弟子”。
たけしにとって深見は“敬愛する師匠”。
若きたけしの青春の日々、師匠と弟子の物語…。
深見に弟子入りを志願。
今は何でもマルチに才能を発揮するたけしだが、この頃は芸の一つも出来やしない。
「バカ野郎!」…と、いきなり大目玉。
芸の一つも出来ないどころか、深見の前では子犬のように萎縮するたけしの姿が信じられない。今、名だけ売れてる第7世代だったら第一声だけでKOされるだろう。
そんなたけしにタップダンスを教え込む深見。
あれ、これって…。
見てたら本当に、“ビートたけし”の礎を築いたのは深見千三郎であるとつくづく思った。
タップダンスと言えば、『座頭市』。
とにかく口が悪い深見。口を開けば、「バカ野郎!」「この野郎!」。我々もTVで知るたけしの口調と言えば、これ。
Wikipediaなんかによると、深見とたけしの両名を知る人は、たけしは深見の“完コピ”ってくらいらしい。
たけしが深見から頂いた言葉の一つ。
「笑われるんじゃねぇ、笑わせろ」
売れてても売れてなくても、生きざまやプライドを感じた。
芸人だよ、バカ野郎!
日々師匠にボロカス怒鳴られっ放しのたけし。
が、初舞台に立ったり、タップダンスは上達していく。
次第に深見の目に留まる。ひょっとしたら、ひょっとするかも。
深見は妻・麻里と住むアパートの空き部屋をたけしに提供。
毒舌家だけど、下町人情人らしい面倒見の良さ。
自分たちの生活も苦しいだろうに、弟子の飯や部屋の家賃はこっち持ち。師匠が弟子に奢るのは当たり前。
たけしも軍団に慕われ、面倒見のいいのは聞いた事がある。
芸風だけじゃなく、この辺のプライベートの性格まで深見の影響を受けているのが見て取れる。
深見に厳しく鍛えられ、麻里やフランス座の面々に見守られ、踊り子の千春と交流しながら、芸人として成長していくたけし。
いつの間にかフランス座の“顔”になる。
そんなフランス座だが、経営は火の車。客足はとっくに遠退き、来るのはストリップ目当て。
折しもTVが普及し、漫才ブーム。
が、深見はTVや漫才を嫌い、先にも述べたが舞台やコントにこだわり続けた。
そんなある日たけしは、フランス座を辞めた先輩芸人のきよしから、一緒に漫才をやらないかと誘われる。
悩みに悩む。
フランス座の外で、自分の芸を試す機会。
が、それはフランス座や深見と決別するという事…。
悩みに悩んだ挙げ句、出した答えは…
外の世界での勝負。
それも苦難多いだろうが、同じくらい苦渋なのは、伝えなければならないこの一言。
「辞めます」
勿論師匠は大激怒。
しかし、この時ばかりはたけしも反論する。
いつまでもこんな所で燻って、何になる? のたれ死ねというのか…?
世話になったフランス座を後にするたけし。
そんなたけしの背中に、破門を言い渡す師匠の怒号が悲しく響く。
「バカ野郎!」
たけしを演じたのは、柳楽優弥。
あの独特の首を捻る所作、身体の仕草、口調まで、さすが同世代屈指の演技技巧者! タップダンスも披露。
圧巻だったのは、時折現在のたけしも挿入。特殊メイクを施して、柳楽自身が熱演。一瞬、ご本人かと思った…。
また、たけしの所作指導や現在の声当ては松村邦洋。やっぱこの人、たけしのモノマネならピカイチ!
そして、深見役で存在感を放つ大泉洋。
毒舌でクールぶってる所は探偵“俺”、元々バラエティー出身なので笑いの勘、人情深さは本人のよう。またまたハマり役。喜怒哀楽の熱演。
二人の掛け合い、やり取りも時に笑わせ、しんみりさせ、見事。この二人だもん、当然か。
周りのキャストでは、鈴木保奈美がいい姉さんっぷり、ナイツ土屋の好相方、門脇麦はヤらせてくれなかったけど華を添えてくれた。
きよしと組んで漫才デビュー。
やっと我々も知っている。
勿論その名は…
松鶴家たけしきよし!
…あれ? ツービートじゃないの?
改名前。全く売れず、鳴かず飛ばず、客と喧嘩し、劇場の支配人から追い出される事も…。
フランス座に帰ろうか…なんて考えが過る。
…いや、ダメだ。何の為に師匠と決別してまでフランス座を出て行ったんだ。
やってやる。何がなんでも。
芸名やネタもガラリと変える。
芸名“ツービート”。
ネタはかなり過激なジョークの連発。
しかし、これがウケた。
賛否両論だけど、全く新しい笑い。
ツービートが劇場に立つと、芸人も見に行くまで。
快進撃は遂にTVの場へ。
が、リハの時、過激なネタがNGとなる。
何をやればいい? 過激なネタで笑わせてこそ、ツービート。
生放送TV出演直前。未だ悩むたけしの脳裏に、師匠の言葉が聞こえる。
「客に媚びるな」
「笑われるんじゃねぇ、笑わせろ」
ツービートが披露したネタは…
だからこそ、今の地位がある。
ビートたけし誕生の瞬間。
一方のフランス座。
たけしが去った後、経営はますます悪化。
かつての弟子・東八郎はある誘いをしてくるが、大激怒。
麻里は芸者をして生計を支え、借金をしてまでフランス座の経営を続ける。
まばらで入った客が寝てても、舞台に立ち続ける事にこだわる深見。断固としてTVに背を向けて。
時代遅れ、頑固者、化石、古臭い石頭…。
どうとでも言いたいだけ言え。
だけど、世の中に一人でも、そういう人が居てもいいじゃないか。
時代や人々が新しいものに目移りする中、自分の“誇り”にしがみ続ける。
劇中で、それを貶す台詞があった。
そんな貶される事か…!?
劇場で客の前に立つのは、どんな芸人にとっても登竜門。売れても舞台に出てネタを披露する芸人は非常に多い。彼らの“本職”なのだ。
深見にとって舞台は“誇り”でもあり、全ての劇場や笑いの“護り人”。
が、そんな彼も遂に限界が…。
フランス座を手放し、芸人を引退。東八郎からの誘い、東の弟子が経営する工場で働く事に…。
天才を育てた天才。なのに…
こうでもしないと食っていけないとは言え、切ない。切なかった…。
麻里と二人三脚の貧しい暮らし。
だけど、まだどん底に落ちちゃあいない。麻里が応援してくれている。舞台に立つ俺が見たいってよ。何てったって、俺は“浅草の深見”!
ところがその麻里も…。
弟子の活躍ぶりは凄まじく、TVで見ない日は無いくらい。
それをたまたまTVで見た深見。何とも言えぬ表情。やはり、凝りがあるのか…?
食堂の客が気を利かせ、チャンネルを変え、たけしの悪口を言う。すると…
大激怒。「素人のテメェに何が分かる!? 俺の弟子だぞ!」
芸の栄えある賞を獲ったたけし。
たまたま近くに寄った事もあり、久々に訪ねる。師匠の元を。
張り詰めたような空気…。気まずい…。訪ねるべきじゃなかったのか…?
小遣いと賞金を深見に渡すたけし。
不機嫌になっていく深見。
昔のたけしならここで、場負けしていただろう。
が、深見がとある行動をし、それに対したけしが鋭いツッコミをし、一気に場の空気が和んだ。
そのままかつてのように飲みに。
深見もバッチリとキメて。しょぼくれ落ちぶれが嘘のように、飲み屋の客を散々笑わせる。“浅草の深見”、まだまだ健在なり!
たけしも応戦。
そういや劇中で二人の笑いの合戦は、このシーンが初めて。このシーンの為にあったのだ!
お開きの際の、かつては怒られた“ハイヒール・ボケ”。あれをしっかりと覚えていて、師匠の為にお膳立てる。
本当に本作は、師弟愛の物語。
もし、体力も精神もMAXだった時の深見だったら、弟子の小遣いなんてブチギレていただろう。
しかし今はもう、そんな気力もない。相変わらず口だけは悪いが。
別の意味もあるかもしれない。
とっくに芸人も辞め、落ちぶれた。それでも、師匠と呼び、慕ってくれる。
「バカ野郎」
それが嬉しかった。
(実際二人は、これを機に再び親交を取り戻したという)
ビートたけしの自伝小説に基づく。
なので、深見の最期も。
悲劇…。
見終わった後、深見千三郎についてWikipediaで詳しく検索してしまったほど。
TV出演が無かった彼が、唯一と言っていいくらいTVで報道でされた最初で最期らしい。
訃報を聞いたたけしが師匠へ捧げた毒舌哀悼が胸に染みた。
また、深見がフランス座を守り続けたもう一つの理由。こんなにも愛されていたんだ。
…いや、ひょっとしたらひょっとしやがった。
大まかな話はエンタメ世界のオーソドックス。
無名の存在。才能を見込まれる。独立。挫折を味わうも、再起。快進撃や地位を築いていく。その心中にあり続けるのは…。
ある大物。若い才能を見抜く。決別。時代に取り残され、アルコールに溺れ…。その心中にあり続けるのは…。
これらをヘンに色を出すのではなく、笑い、人情、ハートフル、感動を織り交ぜ、誰もが見れる好編に仕上げた劇団ひとりの演出に好感。
ファンタスティックなラストが良かった。
現在のフランス座を訪れた現在のたけし。
中に入ると、そこはかつての風景。懐かしい面々が「タケちゃん!」と迎えてくれる。
バックに流れる名曲“浅草キッド”。
何だか自分もたかだか2時間だけなのに、タイムスリップして、ノスタルジックな雰囲気に浸れた。
ラストシーンは深見と舞台に立つ現在のたけし。
あのシーン。あの台詞。
毒舌だけど、生きざま溢れる。
しっかり脈々と、師匠から受け継ぐ。
「芸人だよ、バカ野郎!」
たけしを尊敬するひとり。
深見を師とするたけし。
一見、ひとりがこの二人に捧げたラブレターだが、全ての芸人、全ての芸に万感の思いと笑いを込めて。
2022年の初笑いと初感動。
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