「ちょっと憧れる。」浅草キッド まゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
ちょっと憧れる。
どこまで実話か分からないけど、ビートたけしという人物の魅力と、彼の半生そのものが面白いので、映画やドラマになりやすいのだろうと思います。
大泉洋は本当に何を演っても良いですね。とっても素敵な師匠でした。師匠が良くないとビートたけしの良さが半減するし、師匠が出過ぎるとバランス悪くなる。適度な存在感で丁度良かったです。
柳楽優弥が現在のたけしを特殊メイクで演じていると知ったのは、作品を見終わった後で、かなり驚きました。いや〜本当に凄いです。若者が特殊メイクで老けた役をやると、姿勢や動きや声は若いままなので違和感あるパターンが大半ですが、それは感じませんでした。柳楽優弥はずんぐりむっくりで、背格好含めビートたけしに似せるには都合良いかもしれませんが、ビートたけしは皆んながよく知っている実在の人物なので難しい役だったと思います。
全体的に演出過多、泣かせよう感動させようとしている感が強く、フラグも分かりやすくて先が読める。キレイな話にまとめ過ぎ。何よりビートたけし本人の歌がバックで流れる度に興醒めしてしまい…せっかく気持ちが盛り上がっても歌で台無し。本人が自分のサクセスストーリーに下手な歌付けるのって、なんか間が抜けてませんか。滑稽に感じてしまって、個人的にはあまり涙腺には来ませんでした。
が、エピソードの一つ一つは良く、哀しみや喜び、切なさ、ハラハラドキドキ、ヒリヒリ、十分楽しめます。
作中、弟子のたけしが、師匠の大泉洋の指を「食っちゃったんですか」とボケるシーンがあります。周囲は一瞬凍りつきますが、それに師匠が応えるところが、私はとても好きです。懐にヒュッと入って、熱い血飛沫が出るような。憧れます。
初めてテレビに抜擢されて、出場直前で「元々のネタでやる」と決める場面も良かったです。この選択がその後の人生を分ける大勝負、チャンスはこの一度きりという感じがビンビン伝わってきて、話の展開は分かっていても妙に高揚しました。