「素晴らしい映画だったからちょっとだけ思った「監督・劇団ひとり考」」浅草キッド BDさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい映画だったからちょっとだけ思った「監督・劇団ひとり考」
原作未読。気遣い漏れあったらすみません。
全体として本当に丁寧に作られており、浅草芸人の「粋(いき)」をしっかりと表現した作品で、熱意もあった。ストーリーもわかりやすく、スッと入ってきて理解しやすかった。
一方で、どこかで「できの良い再現ドラマ」を見ている感覚にもなり、没頭感に少し欠けたのも事実。最後の北野武(現在)があの頃のフランス座に入っていくモノローグみたいなシーンは、泣きたかったなぁ。でも泣けなかったなぁ。
劇団ひとり監督作品は「青天の霹靂」以来2作目。青天の霹靂も良い作品で、これもまた同じ浅草芸人がテーマ。「浅草キッド」を見てしまうと、これの準備段階としての映画だったんじゃないかと思うくらい(笑)。主演も大泉洋だしね。
で、2作に共通して思ったのは「丁寧で、真面目な作品」。一方で、見ているうちに「プロットの匂い」がしてしまう作品、でもあった。
浅草の居酒屋での「バカヤロウ。こういうときはあっち(ハイヒール)出すんだよ。そんで俺が『あれっ、ちょっと背高くなったかな、ってバカヤロウ』みたいにいうんだ。芸人だったらいつでもボケろ。」(大意)のくだり、それこそ、劇場で「なんだてめーは」とくだを巻く客に言った「芸人だよ!」のくだりなんかもそうで、「あ、どこかでもう一回来るな」と、僕は思ってしまったんですね。野暮なんですけどすごく。ああ、こういうストーリーの映画なんですね、はいはい。という風に、理屈で納得させられている部分があった気は、ちょっとしています。
これが、右脳で「うわぁ浅草の絵カッコいい!町並みめっちゃ粋だね!大泉渋いね!門脇麦エロいね!」と思っていたらいつの間にか泣いていた、位の映画であったとしたら、俺号泣してたかな?いや、まぁそれはそれでどうだったかな?など、少し思いました。ベタに言っちゃえば、BTTFでヒルバレーの町並みを見てワクワクしてたらいつの間にかプロットの仕掛けに載せられていた、みたいな。
僕はアラフォーなのでテレビでも劇団ひとりをしっかり見ている世代でもあるんですが、芸人・劇団ひとりって、破天荒で、メチャメチャで、だからこそ天才、っていう芸人だと思うんですね(それも真面目の裏返しなんでしょうけど)。この映画を見て、監督・劇団ひとりってこういうモードなんだ、と思って。結果、深見のお師匠の「芸人だったらいつでもボケろ」を、ちょっとだけ思い出しちゃった、というのが素直な感想でもあります。川島さんもっと不真面目でいいっすよ!(とはいえ、監督二作目でこれほどまでの作品を作ってしまうその手腕には、もう脱帽してもしきれません。素晴らしい映画だったからこその、ちょっとした思索と思っていただけると幸いです。)