「ズルい作品」浅草キッド tkryさんの映画レビュー(感想・評価)
ズルい作品
まずはこう言いたいですね。
ラストで「浅草キッド」が流れるなか、顔がびしゃびしゃになるくらい号泣してしまったので何を言っても負けです。劇団ひとり監督の掌で踊らされたのです。
劇場公開でも全然いけた作品です。配信のみとは何ともったいない。
ただ敢えていうと、本作は「ビートたけし」が凡そどういう人物であるかを観客が共有していることを前提として作られているわけです。
これによって、彼の生い立ちやサクセスストーリーなど本作における必要だけど枝葉でもあるエピソードを省くことが可能となり、そのぶん本筋にのみ集中し、散漫な印象を与えないタイトな語り口を実現したのかと思います。
そう考えると本作は普遍的というよりは、むしろ逆で、日本人にのみ響くドメスティックな作品であると推察します。
あとはなんと言っても柳楽優弥さんと大泉洋さんの功績は大きいですね。
ラスト畳みかけのあたりは、少し感動方向に振り過ぎる気がしますがお二人の力もあり気になりませんでした。
また、たけしさんの「モノマネ」については、普通なら笑ってしまうところでありますが、本作ではギリギリまで攻めつつ破綻するところまでは行かない絶妙な塩梅であり、このあたり監督の指導も大きいのではないでしょうか。
よく考えると、現代のたけしさんのカットバックや千春さん周りのシーンなど不要、もしくは見直す余地ありな気もしますが、トータルOKです。
前提知識を共有していることを念頭に置くあたりズルい作品ですが、まんまと監督の思惑どおり響いてしまったので負けです。
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