「バカヤロウがつなぐ師弟関係」浅草キッド bionさんの映画レビュー(感想・評価)
バカヤロウがつなぐ師弟関係
深見千三郎の映像は残っていないし、写真をちょっと見たことがあるくらいだが、ビートたけしが語っていた深見千三郎の生き様を間近で見た錯覚に陥るくらい完成度が高い。ビートたけしの本はほとんど読んでいるが、想像していた深見千三郎と寸分違わない気がする。大泉洋が、粋で、シャイで、芸にこだわりを持っていた深見千三郎その人に見える。
気合いを入れて役作りをしたのは、大泉洋だけではない。ビートたけし役作りの柳楽優弥もそうだが、千春役に門脇麦は相当入れ込んだと思う。『あなたの番です 劇場版』の演技と比較すると別人のような出来だった。そりゃそうだよね。作品の目指している高さが全く違うから。
ビートたけしが、フランス座をやめて漫才で勝負することを告げるシーンに魂が震えた。弟子の門出を祝う「バカヤロウ」と、師匠の役目が終わった寂しさを「バカヤロウ」と吐き出すしかない。
そして、フランス座から立ち去るビートたけしに突っかかる千春が、またいい。会えなくなる寂しさを文字通りタケにぶちかます。抱きつきながら「絶対帰ってこないで」とセリフを吐く門脇麦の表情にめちゃくちゃ感動した。さらに、愛情にこもった「やらせないよ」が、最高にほほえましい。
劇団ひとり監督の最高傑作であることは間違いない。どこかで、記念上映してほしいな。
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