「☆☆☆★★★(ちょい甘) 原作読了済み。 「きみは大丈夫だよ、面白...」ボクたちはみんな大人になれなかった 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
☆☆☆★★★(ちょい甘) 原作読了済み。 「きみは大丈夫だよ、面白...
☆☆☆★★★(ちょい甘)
原作読了済み。
「きみは大丈夫だよ、面白いもん」
テレビ業界の末端で生きる男の、過去に愛した女性との思い出。
原作は疲れた中年男の、ところどころで過去にあった恋愛模様に引きずられ続けた想いを投影する話でした。
時代背景も過去と現代が交互に入れ替わっていたと思う。
それを映像化に於いては、現在から過去に向かって遡って行く形式を採用していた。
ちょっとだけ勘違いを承知で書いてみますが。そんな話の展開のさせ方は、ギャスパー・ノエの『アレックス』を少しだけ彷彿とさせる印象がありました。
…但し、『アレックス』では最後に感動的なラストを迎えますが。残念ながら、この作品ではそこまでの思いは感じられませんでした。
その理由として考えられるのは、最初の30分近くが現在パートになり。付き合っているのかどうかが怪しいスーと、(おそらく原作には無かったと記憶している)離婚した元妻との話。
その後の1時間以上を、元々の原作で中心として描かれていたカオリ(かおり)との、淡いながらも若い2人にとっては人生に於ける濃密な時間経過を過ごす関係となり。彼にとって彼女との日々の想い出は、次第次第に自分の中で増幅されて行きます。
それだけに、始めにスーと元妻の話が長く続いてしまい。カオリとの関係が後回しになってしまっている印象がかなり強く。カオリ自身の最後も、(原作通りだと映画序盤にちらっと映る写真のみ)ある程度は予想出来る描かれ方で。でもその場面自体は、映画の途中で1度描いているだけに。そこまで効果的な演出…とまでには繋がってはいなかった気はします。
そして、映像化された作品の締めくくりにあたるラスト20分くらいは。原作が書かれた時とは違い。その当時には考えられなかった、今現在のコロナ感染が蔓延し、誰もが疲れ果てている東京の世界。
原作を読みながら。面白く読んだ箇所もあれば、「何だか、とりとめのない自分語りがダラダラと続いているなあ〜」と、感じながら読んでいる箇所が交互にやって来る内容に感じていました。
それだけに、なんだかんだと文句を垂れつつも。何故だか嫌いにはなれない。いや寧ろ、(若い2人の恋愛模様は)自分好みの話ではあるし。何よりも作品全体のリズムが良く。映画は初演出の監督さんらしいのですが、今後も観ていきたいと思わせてくれました。
前半での疲れた中年男から暗い童貞男を演じ分ける森山未來の演技は、『アンダードック』同様に好調でした。
2021年11月12日 キネマ旬報シアター/スクリーン3