「何もない物語」ボクたちはみんな大人になれなかった ヨークさんの映画レビュー(感想・評価)
何もない物語
オザケン渋谷系ミュージックにカセットテープ、ポータブルCD、古着ブームからのポールスミス。
「スワロウテイル」や中島らも。ノストラダムスの大予言に落書きのような街中アート。
ネットが世界を飲み込む前の90年代は、みんなが共有するブームやムーブメントがまだあった時代。
懐かしさがセンチメンタルな気持ちにさせる一方で、何者にも、大人にもなれなかった登場人物たちの物語が浅い。あの頃、誰もが経験した事のあるシーンの連続で、多くの人が既視感を覚えて当時の記憶が蘇り懐かしさと切なさで胸が締め付けられるはず。
ここまで絶好の環境が整っているのに生かしきれずに終わってしまった…。
この種の懐かしさは何度も思い出していると色褪せてしまう。同じ手法の作品が世に出して良い数は限られているのだ。だから絶対にハズしてはいけなかったはずなのに、見事に上っ面だけを撫でて終わってしまっている。
「エモい」という言葉の意味が非常に抽象的で広く浅いように、この映画もただのセンチメンタリズムに終始している。
サブカルチャーが溢れかえっていた90年代、00年代に青春を経験してきたボクらが観て、聴いて、読んで、触れて培われてきた感性は、こんな浅い物語に共感するはずがない。
致命的にもったいない作品だと思う。
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