「つまらない大人を生きる私の物語だった。」ボクたちはみんな大人になれなかった はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
つまらない大人を生きる私の物語だった。
「46才。つまらない大人になってしまった」もうこれだけで胸がいっぱいになりました。なんてつまらない大人になってしまったんだ。こんなハズじゃなかったと、いつから私もこんなことを感じながら生きているんだろうか。
46才の佐藤。2020年コロナ禍。ゴーストタウンと化した東京の夜。偶然再会した懐かしい友。まるで走馬灯のように25年間を遡ってゆく物語。テレビ業界の片隅で忙殺される日々。汚れてしまった価値観。矛盾と権力と金。そして時代の移り変わりの中で出会った女性達。タイピング音に合わせて時間軸が変わってゆく構成が見事にハマっていた。
ところで森山未來という俳優は時空を操れるんだろうか。21才の佐藤は確かに21才だったし46才の佐藤は確かに46才だった。何かに一生懸命になりたかったあの頃の自分と、打算で生きる今の自分。何度だって生まれ変わると胸を張る胡散臭い実業家の横でほくそ笑んでいるのは、もしかしたら私かもしれない。
出演者も豪華。(ちょっとどこに出てたか分からなかった方もいます。)伊藤沙莉、東出昌大もよく合ってましたが、特に篠原篤が素晴らしかった。七瀬は今作のキーパーソンでしたね。ママ姿も可愛かったです。
FAX、公衆電話、文通。私も10代を過ごした90年代が懐かしかった。文通もしてたし、オザケンのコンサートも行ったな~。遠い昔の話。さてラストシーン。25年間を見直すように、あるいは払拭するかのように走る佐藤を見ていたら少し気持ちが軽くなった気がした。そして気付けば目の前に大勢の人の波。その中へ消えてゆく。明日の私のように。
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