劇場公開日 2021年9月17日

「同じ手法の是非」マスカレード・ナイト R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0同じ手法の是非

2025年3月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

小説の実写版
私もマスカレードイブだけ読んでない。
「マスカレードホテル」でホテル業のことが描かれてあった。
特質すべきなのが「お客という仮面をつけた人々」という概念で、「ホテルマンは決してその仮面を取ってはいけない」
そして一流ホテルマンの山岸と、刑事新田というほぼ真逆な立ち位置の二人を巧みに描いていた。
この作品は斬新で非常に面白かった。
この「マスカレードナイト」で山岸がロスの本店へ異動することで物語が締めくくられるが、それ以外の着地点は難しいのだろう。
ホテルという不特定多数の人間が集まり、少なからず彼らの要望に応えることは、お客の素性を垣間見ることに他ならない。
この他人の素性という面白さに目を付けたのは素晴らしいと思う。
ここに加えてしまったのが「事件と刑事」
「新参者」シリーズのように長期に続編を作るのは難しいのだろうが、逆に3冊で締めくくるのはそれぞれ記憶に残りやすいかもしれない。
マスカレードホテルの老婆に扮した犯人に対し、マスカレードナイトでは新田が突如アルゼンチンタンゴに反応することで犯人を突き止める。
誰が犯人なのかもわからない状況と、ターゲットさえも不明
こんな状況でホテルマンとして潜入捜査する面白さは格別だ。
客も各々で、一人ずつ素性を調査するしかないというのもいい。
何より仕事を通して信頼していくようになる新田と山岸に注目してしまう。
この犯人逮捕の瞬間
新田の勘
物語上非常に重要な部分なのだが、冒頭のダンスシーンと相まってどうしても取って付けた感が残ってしまった。
アルゼンチンタンゴの講師とか、彼女と話していた人物とか、伏線に感じないのだ。
怪しいと思える客はたくさんいた。
ある意味すべてがミスリードがそうさせるのだろう。
新田はアルゼンチンタンゴを習っていた。
そして仮面舞踏会
たくさんの客との会話
そこから感じた一人の女性客 片桐
彼女から感じ取るタンゴの知識 片桐に対する違和感
確実ではないものの、おそらく新田は会場で片桐を探していた。
そして耳にしたタンゴの先生と仮面をつけた男性っぽい人との会話
この線が唯一一直線となる仕組だ。
物語上犯人の動機とターゲットを置いたのは良かったが、小説では最後の取り調べですべてが明らかになる。
つまり種明かしが解説になってしまっていた。
これでは読み手の気分を損なってしまう。
だから私はその部分をすっ飛ばしてエピローグへ進んだ。
映画ではそれはなかったものの、新田刑事の勘の根拠は少々納得できなかった。
やはり3つの作品をひとつにまとめた方がよかった。
二人の食事感をセッティングした能勢 その後山岸が異動するシナリオの方がいい。
事件という緊迫感 そこにある人間模様は物語性に富む。
マスカレードホテルで一度使った警察による潜入捜査を2度使用することはせずに、まったく違う方法で物語にしてほしかった。
これらが相乗的になることで不完全燃焼感となってしまった。
個人的に悔しさが残った。

R41