劇場公開日 2021年9月17日

「山岸の後半の変貌ぶりが注目ポイントでしょう。ふたりが心を通わせ合うシーンは、ちょっと感動しました。」マスカレード・ナイト 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5山岸の後半の変貌ぶりが注目ポイントでしょう。ふたりが心を通わせ合うシーンは、ちょっと感動しました。

2022年9月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

原作は人気ミステリー作家:東野圭吾による「マスカレード」シリーズ(集英社刊)の同名の第三作。累計発行部数470万部を突破し、屈指の人気を誇る。その第一作である『マスカレード・ホテル』は2019年に実写映画化され、興行収入46.4億円の大ヒットを記録しました。あれから2年、“水と油”のバディが再び難事件に挑むことに。

 舞台となるのはまたしても「ホテル・コルテシア東京」。大晦日のカウントダウン・パーティーに現れる殺人犯を捕まえるため、新田は再び“全てを疑う”潜入捜査官としてホテルのフロントに立つ。他方フロントクラークからコンシェルジュに抜擢された山岸はホテルマンとして“お客様を信じる”ことで最上の時間の提供を心掛けていました。
 2年の時を経ても、2人の考え方は相容れません。そこへ、次々と現れるパーティー招待客≒容疑者を演じる日本映画界を代表する豪華でクセ強めのキャスト陣。誰もが怪しく、謎は深まるばかりなのでした。

 物語はある日、匿名の密告状が警察に届くことから勃発します。
 それは、数日前に都内マンションの一室で起きた不可解な殺人事件の犯人が、12月31日にホテル・コルテシア東京で開催される年越しカウントダウン・パーティー、通称「マスカレード・ナイト」に現れる、というものでした。
 大晦日当日、捜査本部に呼び出された警視庁捜査一課の破天荒な刑事・新田浩介(木村拓哉)は、かつての事件同様、潜入捜査のためホテルのフロントクラークとして働くことになって、またまたホテルの従業員理容室に直行するハメに。
 優秀だがいささか真面目過ぎるホテルマン・山岸尚美(長澤まさみ)と事件解決にあたのますが、パーティーへの参加者は500名、全員仮装し、その素顔を仮面で隠している点が、前回よりも犯人確保を一層難しくさせていました。
 次から次へと正体不明の怪しい人間がホテルを訪れる状況に、二人はわずかな手がかりすら掴めずにいたのです。
 刻一刻と迫り来るタイムリミット。増え続ける容疑者。犯人の狙いは?密告者とは?残されたわずかな時間で、新田と山岸は顔も姿もわからない殺人犯の「仮面」に隠された「真実」に辿り着くことができるのでしょうか?

 破天荒な刑事・新田浩介を演じるのは、もちろん木村拓哉。東野が木村を「あてがき」したと語る新田は正真正銘のハマリ役です。今回冒頭では、タンゴダンスをたっぷり披露していますが、その決めっぷりのかっこいいこと!そして新田の相棒となる真面目過ぎるホテルマン・山岸尚美を演じるのは、もちろん長澤まさみ。来年のダァ子再登場まで待ちきれない人は、本作でダァ子レス状態を回復出来ることでしょう。唯一無二の“バディ”の復活は、これまた当然というくらい息がピッタリ。
 ただ前回のようなホテルマンとして、刑事としての立場の違いによる対立を強調するばかりではありませんでした。ふたりの仕事に対するこだわりを受けとめた上で、理解を促す刑事の能勢(小日向文世)の取り持ち方が素晴らしかったです。能勢の言葉を受けて、国民の命を守ろうとする新田の立場とお客様の安全を守ろうとする自分の立場は同じなんだと山岸が気がつくことが、本作のふたりの関係が進化したところでしょう。まるで新田が乗り移ったかのように犯人に突進していく山岸の後半の変貌ぶりが注目ポイントでしょう。ふたりが心を通わせ合うシーンは、ちょっと感動しました。立場は違っても、使命に打ち込む姿は、共鳴し合えるものなのですね。

 ラストはいささか駆け足気味で、ネタバレについて行けませんでした(^^ゞ新田は仮面舞台会場に突入し、他図多くの仮装を前に悪戦苦闘を余儀なくされますが、割りとサラリと苦闘ぶりが終わってしまうのは残念。もう少し、仮面舞踏会のミステリアスな場面を活かして欲しかったです。

 最後に、本作の伏線として、ロスにホテル・コルテシアが新設されるのにあたり、スタッフ候補の選考が密かに行われていたのです。候補者は山岸と山岸の後任のフロントクラーク氏原祐作(石黒賢)のどちらか、もし山岸が選ばれたらロスに赴任してしまうことになって、このシリーズの続編が困難になるではありませんか。さてどうなったのかは、見てのお楽しみに。(2021年9月17日公開/129分)

流山の小地蔵