「いろいろ気になる…」マスカレード・ナイト キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
いろいろ気になる…
木村拓哉も長澤まさみも好き。
有名俳優や芸能人が多数出演していて、それを見るのも楽しい、というのは理解するが、作品の内容が追いついていない気がして、映画としても、ミステリーとしても、サービス論としても、どうにも呑み込みにくい部分が多く、ちょっと褒めにくい作品だった。
まず映画としては「大事なことは言葉で説明」が多すぎて、映画としての醍醐味はあまり感じられなかった。
そしてミステリーとしては「後出し情報」が多くて、展開に驚かされはするけど「ふーん、そーだったのね」の繰り返し。
やっぱり、何気なく事前に蒔かれた情報が、最終的にこの事件(謎やトリック)の帰結に意味を持つ、みたいなカタルシスはあまり感じなかった。
そして私がどうしても気になってしまうのは、前作から続く「ホテルマンたるものお客様に『無理』と言ってはならない」という、一連のやり取り。
山岸の行動原理という意味で物語上重要な意味を持つこともあり、かなりしつこく繰り返されるこのクダリ。もちろん一流ホテルで働かれている方々の矜持として、そう取り組まれているとすれば、客としてはありがたいことだが、ただただ従業員が明らかにムチャクチャな客のわがままに振り回されながら、(当然ドラマなので)なんとか望みを叶えてホッとする、みたいなシーンを「こういう一見うるさい客にも実は切実な事情がある」みたいな提示の仕方をいくつも繰り返すのはいかがなものか、と思ってしまう。
実際、こういうクレーム客の一定数は「ゴネたもん勝ち」だと思っている、良識に欠けた客層だというのも現実。
少なくとも「お客様の言う事をすべて受け入れること」と「顧客が満足すること」は別だという認識はサービスに関わる仕事に従事する者としては持っておくべきだと思うし。
昔から顧客満足度が高いとされる、帝国ホテルとかディズニーランドのスタッフの「接客にまつわる素敵な話」って、決して顧客のわがままに付き合うことではなかったはず。
少なくとも、「これこそ一流ホテルの理想の姿」みたいな伝わり方をしたら、ただでさえ苦境にあえぐ、世のホテルマン達があまりにも可哀想だと思ってしまう。
ま、勝手に心配しているだけですが。
【ここからネタバレ】
だいたい、日下部(沢村一樹)が2人から選抜するためにやった「テスト」って、このご時世ではほぼ「ブラック」とされる内容だと思うし、その中で山岸(長澤まさみ)が仲根(麻生久美子)との接点を作る様に画策したのは、どう考えても「やってはいけないコト」の部類だと思う。
もうひとつ、最後に山岸が助かったのは犯人が自分の時計を持っていなかったから、ってのもあまりにお粗末な感じ。
「アルゼンチンタンゴは男性同士で踊っても良いそうです」んんん、どう見ても女性だし。