「ドラえもんからのエール」映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ) 2021 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ドラえもんからのエール
映画ドラえもん41作目。
コロナで公開が一年延期になり、ドラえもん映画が一年空いたのは声優交代時以来。
今年公開したけど、タイトルは元のまま“2021”というSF(すこし・ふしぎ)。
暫くオリジナル続いていたが、久々のリメイク。
基になったのは、これまた名作『宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)』。
公開時からレビューに溢れていたが、今年公開された事はタイムリーと言う他ない。
『宇宙小戦争』はドラえもん映画の中でも非常にポリティカルな内容を持つ。
クーデターにより故郷の星を追われた大統領。
軍事力で政権を奪取した独裁者。
平和も自由も奪われた民衆。
反対派は抗い続ける…。
現実世界の該当国が本作を見たらどう思うだろう。
遠いアジアの小国の子供向けアニメ…と思うなかれ。
しっかりとしたテーマやメッセージ。
是非見せて、某国には独裁と戦争の愚かさを訴え、某国には不条理な侵攻に苦しめられている民衆の心に届いたら…。
ドラえもんからのエール。
改めて、何十年も前に色褪せない作品を創造した藤子先生に敬服。
さてさてお堅い話はとりあえずここまでにして、やはり『ドラえもん』は純粋に楽しみたい。
遠い星からやって来た小人の大統領、パピ。
宇宙には見た目も身長も様々な人たちがいると思わせてくれる。
そんな違いなど気にも止めず、すぐ仲良くなるのび太たち。だって子供向けアニメだから…じゃない。これ、非常に大切なメッセージだと思う。
スモールライトで小さくなって、おもちゃの家で楽しく遊ぶ。しずかちゃんは夢に見た牛乳風呂。リメイクして見ても、ここら辺やっぱ夢がある。
敵にスモールライトを奪われ、大ピンチ!
なら、ビッグライトで大きくなれば?…なんてひねくれた見方をしてはいけない。
かつて映画記者が、西部劇で何故敵は主人公の乗る馬車を攻撃し、馬を撃たないんだ?…と意地悪な質問をした。それに対し、巨匠ジョン・フォードはこう応えた。
そんな事をしたら、映画はそこで終わってしまうではないか!
映画は多少のツッコミ所、ご都合主義があって当然。(あり過ぎるのも難だけど…)
ドラえもんたちがビッグライトですぐ大きくなって、簡単に敵をやっつけてめでたしめでたし…そんなのが見たいのか?
大冒険があって、ピンチがあって、絶体絶命の所でスモールライトの効き目が切れて、元の大きさに戻って反撃開始!
それが痛快で面白いんじゃないか!
もう一度言おう。ビッグライトですぐ元に戻ったら、映画はそこで終わってしまうではないか!
基本的な話の流れはオリジナルのまま。
が、“2021バージョン”なだけあって、ちょいちょい脚色。
まず序盤、パピと出会うまでの展開が早い、早い! 自主映画撮影時に映った謎の影(うさぎに乗ったパピ)やしずかちゃんのぬいぐるみ映画撮影はカット。
パピとの出会いのシチュエーションも違う。
最大の違いは、原作やオリジナルでは人質となったしずかと交換にパピがドラコルルに連れ去られる筈が、のび太たちの救出によって連れ去られない事だろう。
代わりにドラコルルは、本作のオリジナルキャラであるパピの姉を手中に。
パピは“助けられる側”から“助けに行く側”に。
ピリカ星に向かうロケットの中で、原作やオリジナルでは描かれなかったのび太たちとパピの交流。ここが変更点でも大きなポイントだろう。お陰で原作やオリジナルでは大人びていたパピだが、内面は悩み、よりのび太たちと同年代視線の親しみ易いキャラとなった。
ピリカ星のピシア本部潜入も新たな展開。スモールライトを餌にパピたちを誘き寄せたドラコルルの策士光る。
この時のび太は逃げおおせ、オリジナルには無い展開なので、どうなるの…??
とは思ったけど、オリジナル通りの展開に繋がった。
変更点でもう一つ良かったのは、民衆の奮起のタイミング。原作やオリジナルでは最後の辺りだったが、今回はそれよりもっと早く。
独裁悪を倒すのは、勇気ある者の声と民衆の団結。
プー…じゃなくて、ギルモアよ、思い知れ!
ギルモアはより滑稽な面が浮き彫りに。ラストの「ここまでか!」の台詞は、スキャンダルがバレたから…?
ドラコルルはより狡猾でキレ者に。
新キャラのパピの姉だけど、確かにパピのアキレス腱だけど、それほど重要キャラじゃなかったな…。
ロコロコは変わらずお喋りだった。にしても、オリジナル声優に似せた梶裕貴の声色がスゲェ…!
リメイク版は時々残念な作りになる事あるけど、本作はタイムリーな問題もあって、奇遇にもテーマやメッセージがより色濃くなり、楽しさも損なわれず。
上々の映画ドラえもんであった。
しかし、唯一完敗したのは…
本作の主題歌と挿入歌も悪くはないが、でもやはり、オリジナルの神曲『少年期』に勝るものはない!
来年は空の理想郷へ!
空舞台と言うと、『雲の王国』は特に好きなドラ映画の一本。
これに勝る事が出来るか…!?
人気脚本家・古沢良太の手腕に期待!