「待ちに待ったリメイク。大変よい作品だと思います。」映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ) 2021 yoshi-eggさんの映画レビュー(感想・評価)
待ちに待ったリメイク。大変よい作品だと思います。
非常によいリメイクだと思います。
まずは良かった点
1. ピイナというキャラの登場には少し心配しましたが、パピが囚われてほとんど出番がなかった前作と異なり、今作では、パピが掘り下げられてよかったと思います。
2. ドラえもん達はきっかけを与えただけであり、ピリカ星人達が自ら問題を解決したというところがより強調されているのもよかったと思います。
3. 映像もよかったです。特に無人戦闘艇発進のシーンの恐怖感が印象的です。
4. 前作にあった詰めが甘い部分がいくつか解消されていたのもよいですね。 前作では家の外にいる探査球をわざわざパピが撃ち落として怪しまれていましたが、今回は屋内に入ってきたので仕方なく破壊した感じになりました。また、PCIAがのび太たちをマークする理由が明確になりました。(前作ではジャイアンなどは凶暴な顔だっからという理由だけでマークされていました。)
次に残念だった点
1. これは前作と同様ですが探査球の電波の発信源に、スモールライトでわざわざ小さくなって、まだ改造していないラジコンで乗り込むシーンがあります。行き違いとなって出会いませんでしたが、この状態で出会っていれば勝ち目はありません。今作では、前作と異なり、一応パピは止めようとはしていますが、それでもやはりこの行動は非合理的です。今作では他のシーンでもかなり大きな変更を加えているのだから、ここも大きく変更して、皆が小さい状態でしずかちゃんを残して壁紙秘密基地を留守にする他の理由をなんとか考えてほしかったです。
あと一息だったなという点
1. 無人戦闘艇との戦いですが、おそらくかなりの犠牲者が出ているものと考えられます。前作でゲンブは「大勝利に終わった」というだけで犠牲者について全く触れられていませんでしたが、本作では「犠牲もあったが、、、」と言及しています。前作ではおそらくあえて避けていた犠牲者の存在について今作では言及していることについては高く評価したいですが、一言で終わらせてしまうのは少し不十分なように思います。生還したパイロットに駆け寄って無事を喜ぶ基地スタッフを映すともに、画面の端のほうにちらっと、大切な人が帰らないことを知って泣き崩れる基地スタッフを映すなどしたほうが伝わったのではないかと思います。
2.パピがあの内容の演説が中断されずに最後まで放送されてしまった理由が欲しかったです。例えば以下のようなシーンがあっても面白かったのではないかと思います。
・演説内容が怪しくなってきたところで、ドラコルルがコントロールルームに放送中止を無線指示。
・コントロールルームのスタッフ(PCIA兵)がパピの演説を聞いて涙を流しており、放送中止指示を無視。
・コントロールルームに他のPCIA兵がなだれ込んでコントロールルームのPCIA兵を取り抑え、放送中止に至る。
・以上のやり取りの結果放送中止が遅れて、パピの演説ほぼすべてが放送されてしまう。
少しくさい表現だとは思いますが、原作マンガでも軍内からのギルモア不人気は語られており、また、パピのリーダーとしての適正を表現するという意味でも、このくらいしてもよいと思います。
3.また、立ち上がった民衆達に押されてPCIA兵が逃げるときに、あっさり逃げるのではなく、少し迷うところを表現してもよかったと思います。例えば、
・集まってくる民衆達
・PCIA兵達が民衆に銃を向けて「解散しろ」と命令
・かまわず前進する民衆達
・PCIA兵達が後ずさりしながら「撃つぞ!」と警告
・それでも構わず前進する民衆達
・PCIA兵達同士の会話 PCIA兵A:「撃ちますか?」 PCIA兵B:「撃てるか!」
・PCIA兵達 銃を捨てて逃げる
4.あと、本作リメイクにあたりおそらく最も問題であったもとの大きさに戻ってからの戦闘シーンです。前作のように有人機と思われる機体を叩き落としたり踏み潰したりするのはまずいですが、今作の、「調べたけど無人だったよ」というのはあまりにも都合がよすぎると思います。
飛行機やヘリは手づかみで捕まえて羽やプロペラをむしってしまう、戦車は蹴飛ばしてひっくり返すくらいがよかったのではないかと思います。冷静に考えるとそれでも中の人はただですまないかもしれませんが、それを言い出したら、クジラ型の戦闘艇に向けてぽこぽこビームを撃つのもアウトになってしまいます。コックピットが爆発しておらず、かつ、画面の端のほうで機体から乗組員が逃げていくところが少し描写されていればセーフなような気がします。
私にとって、のび太の宇宙小戦争は最も好きな作品の1つであると同時に、いくつかの欠点も気になる作品でした。リメイク版第1作であるのび太の恐竜2006が上映され、リメイク版第2作のび太の新魔界大冒険が発表されたころから、欠点が補われた新しいのび太の宇宙小戦争がいつの日かリメイクされることを十数年に渡り心待ちにしておりました。本作品は現代のコンプライアンスにそぐわない点も多く、半ば諦めておりましたが、創意工夫して素晴らしい作品として世に出してくださったスタッフの方々に深く感謝いたします。本当に楽しませていただきました。ありがとうございました。