「恍惚した表情にやられた。」Swallow スワロウ ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
恍惚した表情にやられた。
強烈な映画だった。
倦怠夫婦モノとしては、ゴーンガール以来の衝撃ではないだろうか。
男性優位の社会における女性の生きづらさ。
義理の両親との歪んだ関係性。
一見すると自由に見えて、その実誰よりも抑圧された生活を強いられている様子が丁寧に描かれる。
それゆえ、見る人は"異食"という奇行に走る彼女に否応なしに感情移入してしまう。
何故ならそれが、彼女に唯一許された"自由"であるのだから。
異物を飲み込む時の痛みと快感は、見ているこっちも辛くなるほどのものだった。
そう言った意味では、そこらのスリラーやホラーよりも見るものに精神的苦痛を強いる映画ではあるだろう。
しかし本作を見終わった後に感じたのは"解放"だった。
どこか晴々とした気持ちでエンドロールを見ることができた。
不快な題材と映像表現であるにも関わらず、エンタメとして成立しているのは。
ひとえに本作の映像美ゆえだろう。
徹底的に練られた構図、ライティング、繊細なSE。
ここにヘイリー・ベネットの美しさと素晴らしい演技が乗ってくるから成立するのである。
これら一つでもバランスを欠いてしまったら、この映画は成立しなかったであろう。
どこまでも繊細かつ大胆な映画だ。
儚げなヘイリー・ベネットが異物を飲み込む時の恍惚とした表情には誰もが唸るだろう。
自宅で鑑賞する際にはヘッドフォン推奨。
喉を通る異物の音、痛みと快感の感じ方も倍増する事請け合いだ。
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