「28分でデモの多くの側面を見せてくれる」香港画 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
28分でデモの多くの側面を見せてくれる
28分の短編映画とは思えないほどに、香港デモの多面的な側面を見せてくれる作品だ。今まで政治の関心が低かったがデモに参加する若者、勇武派と呼ばれる過激な行動も辞さない中学生、民主派の議員、警察のやり方に違和感を覚えて退職した元警官、デモ隊に破壊される店、私服警官とのいざこざ、そして催涙ガスや放水車で容赦なくデモ隊に浴びせる警官隊の横暴。
元警官の証言を得ているのが貴重だ。デモ以前、香港市民と警察の関係は良好だったそうだ。パトロール中には小さい子供たちは手を振ってくれたりもしたとその女性は懐かしがる。しかし、それが全く別のものになってしまった、政府はなぜこの政治問題の解決を現場の警察に押し付けるのかと彼女は失望をあらわにする。
デモ隊が店を破壊する様は痛ましい。市民同士が傷つけあう必要は本来ないはずだ。民主派と親中派に分断された香港社会では、政府VS民衆だけでなく、民衆同士の対立まで生んでしまった。米国議会で香港人権法案が可決された時のお祭り騒ぎも記録されている。香港なのでアメリカ国家が斉唱される。奇妙な感覚に襲われるが、彼らには国際世論しか頼りになるものがないのだ。日本語で書かれた落書きが映されたカットがある。日本人もこの問題にきちんと向き合わなくてはならない。香港の問題はいずれ日本にもつながっているのだ。いや、もうつながっているはずだ。
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