「熱量高めの犯罪サスペンスだが、ラストはどうかなと。」Q&A 瀬戸口仁さんの映画レビュー(感想・評価)
熱量高めの犯罪サスペンスだが、ラストはどうかなと。
タイトルは原題も同じ「Q&A」なのだが、検察の尋問調書という意味だそうだ。
警察内部の腐敗を暴くクライム・サスペンスで、数多くの登場人物が出てくるが、いろいろな要素を詰め込み過ぎてると感じた。退屈ということは無いし、見ている間は、目移りすることなく、鑑賞することができる。
NYのベテラン刑事ブレナン(ニック・ノルティ)が、麻薬の売人を殺害。ブレナンは正当防衛を主張。検察の課長ケヴィン・クイン(パトリック・オニール)は、若手検事アル(ティモシー・ハットン)に、本件の担当を命じた。
アルは、目撃者の1人で麻薬ディーラー、ボビー・テックス(アーマンド・アサンテ)の証言が食い違うことに気づく。ブレナンには裏の顔がある一方、彼の有罪を決定づける、ロジャーというおかまの存在が浮上する、、、。
ニック・ノルティが、悪の権化のような、野蛮で卑劣極まりない悪役を怪演。ものすごい存在感で、強烈な印象を残す。そのぶんだけ、正義の側のティモシー・ハットンが、弱く見えちゃう気もする。
本国アメリカでは批評家に賞賛された一方で、観客の評判はよろしくなかった。熱量高めの犯罪サスペンスで、アルとブレナンが対決するクライマックスも良いのだが、その割にアルの最後の選択には、あっけなさというか、拍子抜けしてしまった。
人種差別や同性愛への差別、暴力的で侮蔑的な、これでもか、これでもかというくらい、下品な台詞や表現が出てくるのには、ちょっと不愉快だった。でも、当時のアメリカで、社会問題化していたことの反映なのかもしれないね。
ボビーの内縁の妻ナンシー(シドニー・ルメット監督の娘で、後に脚本家として成功するジェニー・ルメットが演じている)がアルの元恋人で、アルと別れた原因が人種差別絡みだったりする。
また、アルとともに捜査にあたった刑事も、ブレナンから賄賂を受け取っていたりと、非常にいろいろな要素を詰め込んでいて、見ている間は飽きることは無いのだが、なんだか食べ過ぎ感、膨満感を感じてしまう映画だった。