「メキシコのリアル」ミッドナイト・ファミリー コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
メキシコのリアル
カメラの画角が、運転時や平常時はキャストへ寄り、事件が起きて救命活動に入ると望遠で抑えるという、ハリウッド映画みたいなカット割りなので、ドキュメンタリーであることを忘れる瞬間が何度もありました。
まるでドラマ。
一瞬やらせではないかと疑うが、被写体との信頼関係を構築したことにより、効果的な位置にカメラを複数置くことに成功しているのかもしれません。
その強烈な「画」によって描かれるのは、命を救おうと頑張っても、患者は料金が払えず踏み倒し、報酬がなかなか得られずに苦しむなオチョア家の葛藤する姿だ。
そしてオチョア家を苦しめる、メキシコ政府の無能さ、行政の停滞、警察の腐敗ぶりもひどい。
そもそもインフラが整っていない文化・経済の低さで、(日本の敗戦後すぐの時期に近い)途上国といってもいい混乱した社会であるのが最大の問題。
闇救急隊をやっている連中は、医療関連の教育や訓練も受けていないので、適切な医療行為もできないし、薬の注射等ができる資格もないわけで、むしろ感染症などのほうが心配になるレベルだ。
だが、それらのを解決せずそのままにしているのは「市民の収入の低さとモラルの低さ」と、行き過ぎた「自己責任論」なので、それこそ「自業自得」だなぁとも思いました。
遠い他国のことと他人事に思っていられません。
救急車の有料化案が出たり、医療費の負担率が上がったり。
さらには、行き過ぎた保健所・病院の人員削減による医療崩壊の危険性は、ついこの1~2年で新型コロナによって露呈したばかり。
緊縮財政に増税が続く、新自由主義政策によって日本が衰退を続けていけば、ここまでひどくはないが、近いところまで追いつめられてしまうんじゃないかという可能性に思い至り、恐ろしさも感じてしまいました。