「夢ってなぁに?と首を傾げる魔法使いに確かに夢って何だろう?とオトナだけは思い知らされます」映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ よねさんの映画レビュー(感想・評価)
夢ってなぁに?と首を傾げる魔法使いに確かに夢って何だろう?とオトナだけは思い知らされます
いつものように“喫茶すみっコ“でのんびり朝食を取っているすみっコに特別な夜が近づいていた。それは“5年に1度の青い大満月の夜”。その夜には魔法使いたちがやって来て夢を叶えてくれるという伝説を知ったすみっコたちが公園を覗きに行ってみると、そこでは5人の魔法使いの兄弟がお祝いの準備をしていた。楽しい夜を過ごしたすみっコたちはパーティが終わって帰っていく魔法使いたちを見送るが、たぴおかの水色と魔法使いの末っ子ふぁいぶが入れ替わってしまったことを知る。兄弟に置いてけぼりにされたふぁいぶはとかげの家に住むこととなりすみっコたちとすぐに打ち解けるが、すみっコたちに恩返しをしたいふぁいぶはすみっコたちの夢をかなえようとするが・・・。
そもそもすみっコたちは我々世間の片隅で何とか踏ん張って生きている普通の人達そのもの。それぞれが抱える夢もささやかで微笑ましいものばかり。一方のふぁいぶは魔法使いで修行をすれば何でも出来てしまうので夢を持っていない。ポスターコピーの“夢ってなぁに?”というのはまさにふぁいぶの素朴な疑問。すみっコたちに教わってようやく夢を理解したふぁいぶがまだ修行中の魔法ですみっコたちの夢を叶えようとして失敗ばかりするわけですが、すみっコたち自身はそもそも夢を叶えることにそんなに熱心ではない。そもそも大満月の夜に夢が叶う伝説があるのにそれを試しに魔法使いに会いに行ったわけでもない。彼らの夢は夢のままでずっと彼らの胸にあるもの。しかしそのうちの1人、とかげの夢だけが切実であることが物語を転がします。そこにあるのは子供たちなら誰でも持つ希望、そんなことすら叶えられない現実がキュートなすみっコの世界にもあるというのがクサッと胸に刺さる作品。
前作で食らった強烈な感動をちょっと期待していましたがそれは全然なく淡々とした絵本のような話。その分観客の半分を占めるちっちゃなお客さんたちは大喜びで、キラキラした瞳でスクリーンに見入っていました。エンドロールが終わると、みんな大きなすみっこのぬいぐるみを抱えて来ていて、観賞中には流れなかった涙がドッと溢れました。やっぱりキュートっていうのは人類最強の武器だと思います。
やっぱり前作と比較すると物足りないので、前作では気にならなかった井ノ原快彦と本上まなみのナレーションが鬱陶しく聞こえました。そこは監督と脚本の人が変わったからでしょうね。お話もほとんど絵本なのでナレーション全部なしでも全然大丈夫だったと思います。あと前作をさらに高みに持っていったのは原田知世が歌う主題歌。今回のBump of Chickenはどこにもフックがない曲だったので3作目ではまた原田知世に戻してもらいたいです。