劇場公開日 2021年2月19日

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「アンラッキー・ストライク」藁にもすがる獣たち kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5アンラッキー・ストライク

2021年4月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 10億ウォンの大金をめぐり、時系列をいじり、金に目のくらんだメイン4人の人生が交錯する、曽根啓介の原作による作品。とてもブラック、ノワール、複雑!といったスリリングな展開と章立てによる意味深な伏線が光っていた。

 あれがこれで、彼女が恋人で、誰が誰を殺したのか・・・最初からニュース音声が見事に事件を象徴していた。こうなってくると、バラバラ殺人は誰の手によるものなのか、凶器は包丁なのか、身元不明遺体は・・・と、ストーリーを追うのが楽しくなってくる。残酷でスタイリッシュなストーリーといっても過言ではない。

 借金まみれの恋人のために港湾ヤクザに付きまとわれるテヨン(チョン・ウソン)が中心だと思えば理解しやすかったけど、その恋人の残忍さや悲運であるミラン、そのミランのためにDV夫を殺害しようとする中国人不法移民ジンテ。サウナで働くジュンマンとその家族の運命が悲しくもあり、最後には・・・といった展開だ。

 まぁ、ヨンヒとミランという対照的な性格の二人の位置づけが印象的であり、シロワニというサメのエピソードが色々と考えさせられた。そもそも、精子と卵子のような話だと、もっとも強いものが生き残るのだろうけど、それが様々な性格を持つようになる人間の神秘と似ているんだと考えてしまった。

 貧困にあえぐ庶民の生活を象徴している弱肉強食の人間関係をも表しているし、偶発的なものから計画性のあるエピソードまで、皮肉とも思える人間の内面をえぐったような内容ともとれる。大金を得ようとする人間の欲望、残酷性、「人を信用するな」という教訓など、単純なクライムサスペンスとは思えないほどだった。

 そんな中、ラッキーストライクが幸運のタバコだと信じたのにまったくの不運に繋がるとか、ゾクゾクさせられたのですが、最後のコインロッカーのキーだけは納得できず。あまりにもうますぎて、殺人事件の現場捜査で発見できないという矛盾。まぁ、これが韓国警察の手抜かりだというのなら、それでいいんですけど・・・

kossy