「戦争映画として見ればギリ見れるレベル」ムーラン 戦場の花 NICHI MAGAさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争映画として見ればギリ見れるレベル
ムーランというとディズニーのムーランが真っ先に思い浮かぶのではないだろうか。
それを期待してこの作品を見ると大やけどする。
戦争の真っ只中、病弱な父の代わりに兵士として出兵することを決意したムーランは、女人禁制の軍の中でどのように生き抜いていくのか。
主人公ムーランの生き様に注目が集まる作品になると思われたが、本作品はまったくそのようなことにはならなかった。
まず初めに、ムーランの魅せ方に問題がある。開始30分くらいで最初の戦闘シーンが入る。戦闘シーンと言っても味方と敵合わせて10人弱の小規模なもの。おまけに味方の方が人数は多く、敵はたったの3人。敵からの奇襲を受け、味方の一人が負傷したことをきっかけに、それに激昂した別の味方が敵に切りかかっていくところから戦いが始まる。この味方と敵、1対1で戦うのだが、敵の方が上手で切りかかっていった味方がやられそうになってしまう。そんな時にムーランが続いて戦い始めるのだが、簡単に圧勝してしまう。それを見た敵は今度は2対1でムーランに戦いを挑むのだが、これまたムーランが圧勝してしまう。兵士である大の男を、しかも2対1であるにもかかわらず、女性であるムーランが勝ってしまうのは少々持ち上げすぎな演出に見える。勇敢な女性、男性よりも強い女性を見せたかったのかもしれないが、あまりに道理が通らない演出は逆に寒く見える。
そして何より、女人禁制の軍の中での生活において、「女人禁制」が全く障害になっていない。軍の中で生活していても全然バレない。軍の中で1年生活していてもバレない。女性であることを知っている兵士も中にはいるが、彼らはなんら協力をしてくれているわけではない。
女性の身で兵士になることが罪である。これがムーランにとっての1番の障害でありながら、それを取り上げて演出しなかったところに問題がある。特に演出されているところといえば戦争中の戦闘シーン、戦争のむごさ、といったものばかり。ムーランがメインのはずなのに戦いがメインになってしまっている。
戦争はとても怖いね。戦争はとてもむごいね。というところはよく伝わるので戦争映画として見るとよいかもしれない。ヒロイン系の映画と期待すると大やけどする1本である。