「本当、みんな映画好きなんだなあ」浜の朝日の嘘つきどもと tackさんの映画レビュー(感想・評価)
本当、みんな映画好きなんだなあ
僕は映画に救われ、映画に生きる希望をもらったことがある人間なので、
もう序盤の茂木莉子と朝日座支配人の森田さんのやりとりから一気に引き込まれた。
まるで、僕がいつも思っているような会話が劇中で繰り広げられている。
しかし、その一方で森田さんが経験した苦い過去も考えると、一概に自分の意見で、人をうなずかせることも出来ないのだな、と痛感。
この映画に明確な答えやオチはない。最も、朝日座の存続か否かが大筋のストーリーの主軸だろうが、映画館によってそれぞれの生き方に何を与え、何が変わったか。きっとこの映画を観ている人は根っからの映画好きの人が多いだろうから、絶対劇中に「自分はこうだなあ」とか映画に対する想いが脳裏を過ったはず。映画を観ながら、映画愛を再確認する、という稀有な体験を得た。
映画館で観る映画はやはり特別である。携帯をオフにするのって映画館くらいだし、2時間前後と言う時間、目に入るのはスクリーンのみ。他の人の笑いやすすり泣きを聴くのも面白い(残念ながらたまにビニール音もあるが。。。)。
実際、今作もあちらこちらから笑いとすすり泣きが聞こえてきて、なんかホッとした。皆映画好きなんだなあ、と。
あと単純に、登場人物みんな人間味があって好き。こういう暖かい映画は波はないけど、しんみり来て笑顔で涙が出てくる。
今作は一部を除いて、ほぼ各地域のミニシアターで上映されている。ポニーキャニオンと言う大手の配給ながら大手シネコンではなく、全国のミニシアターで上映されているのは、ひとえに制作陣の映画と映画館、そしてそれに集う人たちへの愛に他ならない。
コロナ禍以前にミニシアターは苦境続きだが、映画を愛する人たちにとってミニシアターがあるから出会える作品が多くあるので、これからも劇場に行くし、こういった映画を製作する人たちがいる事を嬉しく思う。