劇場公開日 2021年9月10日

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「「割り切れない」人情が映画館を救う! コロナ禍における希望の光を描く…豪華出演陣も◎」浜の朝日の嘘つきどもと Koheiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「割り切れない」人情が映画館を救う! コロナ禍における希望の光を描く…豪華出演陣も◎

2021年9月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

東日本大震災から10年。被災した人々にも様々なバックグラウンドや立場があり、ひとことで「被災者」について語ることは難しい。その点について、改めて考えさせられたし、人情というものが「割り切れない」からこそ、昨今のコロナ禍によりなお息苦しい現代社会に対する「特効薬」になれば良いな、と多少の期待を抱いた。劇中でも触れられたように、映画こそ人間の内面を豊かにしてくれる(映画を愛する人たちに対して、そんな大袈裟な言い方をする必要はないかもしれない)。それに、ネットフリックスやAmazonプライムビデオといったサブスク動画配信サービスやユーチューブが栄華をきわめ、自宅で一人で映画を楽しむことができるようになった今でも、アカの他人が劇場に集い、共に笑い、涙する経験は(特に「根暗な」人間にとっては)かけがえのないものであり、一定の需要はある(地域差はあれど)。被災地域の「雇用」と「にぎわい」と天秤にかけられ、存続の危機に瀕した朝日座は、映画館を残したいという地域の人々の密かなる「割り切れない」人情に支えられ、新たな道を切り拓いた。合理性や採算性のみに注目すれば、その道は閉ざされただろう。ハッピーエンドな結末を「安直だ」と批判するコメントがこれから出てこないとも限らないが、この作品は何より「割り切れない」人情を見事に描いていると思う。言い換えれば、それは東日本大震災の「被災者」のみならず、コロナ禍においてもがき苦しんできた、あらゆる人々にとっての希望の光である。「明けない夜はない」ことを身をもって表現した主人公・浜野あさひを演じた高畑充希をはじめ、豪華出演陣の奏でるハーモニーが作品の魅力を高めていることは、もれなく述べておきたい。

Kohei