「戦後日本人の精神性はどこから?」日本独立 SAITOさんの映画レビュー(感想・評価)
戦後日本人の精神性はどこから?
日本国民にとってのまことに深刻な歴史の重荷に改めて気づかされる作品でした。
戦後75年、いまなおアメリカ合衆国及びGHQの犯した戦争犯罪による呪縛に翻弄され、新憲法を無意見に賛美する平和教育や、誤った歴史観に侵され続けてきた日本人2世、3世が、私自身も含めてここにいるということに改めて思いをいたしております。映画中では、戦争犯罪人の一方的な断罪、戦争指導者として認定された者の大規模な公職追放、赦免された日本共産党が発表した天皇制否定の「新憲法の骨子」にも触れ、吉田茂とマッカーサーの極秘会談では、戦勝国による敗戦国の法律改正等を禁じたハーグ陸戦条約違反を吉田が司令官に突き付ける姿も・・
わが国では最近ようやく憲法改正の機運が見えてきたとはいえ、占領期のWGIP(War Guilt Information program)に侵された一部マスメディアの執拗な反日扇動や、戦後教育による精神性が根強く再生産されていることを考えると、独立国としての尊厳を回復するにはまだまだ時間を要することでしょう。「平和憲法」信仰に根差した戦後教育の害悪はあまりに大きかったと言わざるを得ません。すでに鬼籍に入られた小野田寛郎さんは、戦後日本人の精神性の変容に愕然としブラジルに渡られました。日本人として戦争を戦った台湾の李登輝さんは繰り返し「日本人よ、自信を持て」と説かれました。いずれも戦後教育の場にはおられなかった方々です。またいずれも今日の日本では「極右」として退けられるはずの方です。GHQが日本に残した深刻な爪痕。日本は戦争に負けたばかりでなく、憲法制定でも二度目の敗北を喫し、さらに営々と築いてきた民族の精神性崩壊という致命的な「第三の敗北」も認めざるを得ないとも言えます。安倍晋三さんが言う「戦後レジームの脱却」はなお道遠しというところでしょうか。
さらに特に印象的だったのは、主人公白洲次郎による吉田満著「戦艦大和ノ最期」を読み入る場面です。三千人戦艦大和船員の死について「天下に恥じざる最期なり」と読み上げる白洲。「天下に恥じざる最期なり」は「戦艦大和ノ最期」の結語にあたる部分です。実はこの文節、初版本では別のフレーズに置き換えられ陽の目を見ていません。脚本の伊藤俊也氏は、初稿原稿を探し出して敢えて世に問うたのです。
研究者上島嘉郎氏によれば、GHQの手で発禁処分になった後、初稿のこの部分は、発行時「彼ら終焉の胸中はたして如何」と書き換えられたとしています。これはGHQによる検閲がなくなったサンフランシスコ講和会議後のことです。上島氏は、戦後の「戦争絶対悪」の価値観が支配していく中で、日本はすでに講和が成り独立国としての歩みを始めていたとはいえ、日本人の「精神性の敗北」に抗いえなかった著者吉田満氏自身の手で書き換えられたものであるとしています。このことは日本人の精神性が戦前と戦後で明らかに転換していた証左とも言えるのではないでしょうか。この映画からは新憲法の欺瞞に満ちた成立過程を単に追うのではなく、今なお「精神性の敗北」を引きずっている日本人を覚醒させようとする伊藤俊也監督の意図が透けて見えます。
それにしても、吉田茂役が小林薫だったとは・・
二度目の視聴で初めて気づきました。このメイクはスバラシイ!