ドライブ・マイ・カーのレビュー・感想・評価
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今年一番の邦画になりそう
原作は30分もあれば読み切ってしまう短編小説。これをどうしたら3時間もの尺の映画にするんだろう。そんな疑問がありましたが、長さを感じさせない秀逸な物語でした。
原作部分は全体の一割もなく、ほとんどが監督オリジナルのストーリー展開。
心と言葉、言葉と身体、身体と心。人とのつながりや、喪う事の喪失感。どうしようもない、行き場のない感情。残された人々が、それでも日々を生きていく。
せつなくて、最後の方は目がウルウルしてしまいました。
言葉にならない感動と奇抜さによる驚きが!
村上春樹の短編小説「ドライブ・マイ・カー」を濱口竜介による独特なエッセンスを加えて描いた作品。
2021年のカンヌ国際映画祭で脚本賞と独立賞を総なめにしたことでも話題になった本作。
主人公の喪失や葛藤を乗り越える話という一見王道でありふれた設定のストーリーを「多言語演劇」や小説じみた台詞の羅列等の要素で描ききった傑作でした。
この映画には2つの奇妙で奇抜な要素があります。
1つめは小説じみたストーリーを語る台詞の羅列です。
序盤で霧島れいか演じる主人公の妻が行為の後に原作のドライブ・マイ・カーとは全く関係ないオリジナルの物語を語りだします。
一見本編と関係ないストーリーなので観てる最中は違和感があるものの、後にそれが非常に重要なエッセンスになっていた事が判明するので驚かされます。
2つめは「多言語演劇」です。
チェーホフの「ワーニャ叔父さん」を韓国人や台湾人等と共に多言語で行うという奇抜な劇を主人公は演出しました。
その「何度も行って本読み」を行うことによって言語の違う人同士から言葉にはならない特別な感動が生まれるのだと思います。
それが、言葉が通じ合わない人や言葉がわからない人とでも、やり方を練れば通じあえるものがあると感じざるを得ませんでした。
そして、関係ないように感じる「ワーニャ叔父さん」の物語も劇中の主人公の抱えている問題や心の葛藤に上手くマッチングしていて、実在の演劇とオリジナルのストーリーのブレンドが非常に上手いと感心しました。
その「何度も行う本読み」ですが、監督の濱口竜介は、撮影入る前に棒読みのままひたすら本読みを行って台詞を体に染み込ませて現場で初めて感情を入れるという独特な演技指導術を行うそうです。
それを今回インタビューで初めて知りました。
そのメソッドが本作では直接映画シーンに入れていて、それが「ワーニャ叔父さん」の多言語劇だったり、役者陣の素晴らしい演技に映えていました。
岡田将生のあの車の中の演技ってまさにこれが無ければどんな名俳優でも出来ないことでしょう!
岡田将生の実力だけじゃなくて濱口竜介の凄さを思い知りました。
また、西島秀俊や三浦透子の演技は言うまでもなく、韓国手話で演技する女優を演じたパク・ユリムさんの演技も非常に引き込ました。
僕は時折、映画というのはストーリー、演技、演出、エッセンス、映像、音、それらが組み合わさることで初めて生まれる総合芸術だなと思うことがあります。
この映画を観て久々にそれを思い出させてくれた気がします。
映画の可能性は無限ですね。
そして、上映時間が179分という近年の100館規模以上の日本映画ではかなり異例の長さですが、西島秀俊演じる家福の心の葛藤を取り除くために必要な長さとして確実に必要だったと思います。
3時間という長旅でしたが、非常に有意義な3時間でした!
ストーリーが展開されていくたびにどんどん引き込まれて釘付けになったし、最後は涙もしてしまう作品です。
大傑作!必見です!
愛の奇跡
見応えがある3時間でした。
どうも冒頭からいきなりの似非ロマンポルノ風というか形而上的ポルノというかは、度肝を抜かれましたが見事なまでに主人公の心の空洞を表す展開でした。
濱口監督は脚本担当の映画はたくさん観ているのですが、本人監督作は多分初見です。新鮮味としてはオーディションの場面とか、舞台のけいこ風景等素人の好奇心をくすぐる丁寧な描き方で好感がもてました。
また映画の中の人物達がそれぞれに場面に命を吹き込んでいる躍動も感心しました。一人としておざなりの配役をしていないのは、一目瞭然で特に韓国の手話の女優さんのオーディションと舞台の最後のシーン。凝視している自分がいました(素晴らしい表現力!!)
運転手役の女優さんは、冒頭からなにか暗い背景を持っていることは想像していましたが、ラストこう来るかって演技で多分これから注目の方ですよね。
いずれにしても生きること、大事な人を喪っても残るこころの持って行き場のなさ。経験のある方にはこんな優しも厳しい表現は、これから生きる力になります。
濱口監督ありがとう。
蛇足:ところで吉田大八監督はどこの場面に出てましたか?知ってる方教えて下さい。
長くは感じず
なかなか難しい、妻を亡くした喪失感が表れてこない2時間ちょっと、ですがそんなに長さは感じず。
それぞれが思いを吐露するには相応の時間が必要ということでしょうか。
年代的にSAABが現役で走ってくれているのが嬉しかった!
西島さんはいい味出していました。
人生を考える
ちょっと長くて疲れたけど、いろいろ考えたいい映画でした。
最初妻の浮気に怒らないシーンに自分ならと思ったけど、最後にやはり辛かった男の本音が出て納得した。
人生残された人はただ生きて行かないととうのは本当にそうだ。50過ぎの人は心が動かずにいられない。
あと少し頑張らないとね。
他人事ではないメッセージ
妻を亡くした夫の家福。喪失感に苛まれながらも生きていく。そんな中、演劇祭の専属ドライバーみさきや妻と関係のあった高槻との交流から、自分がどうするべきだったか、目を背けてきたことに気づく…
最初の方は違和感、棒読み感もあった。村上春樹原作作品だからか分からないけど、そんな話し方するのかなあ。
でもまあ、途中で慣れた。
本作で家福が気づくことは決して他人事ではない。辛いことも目を背けて耐えるのではなく、自分と向かい合うべき。3時間弱の長尺だからこそゆっくりと深く染み込んできた。
その後の劇内容と家福の心情がリンクしたかのような瞬間は最高に胸が高まった。
ある目的のために、演劇読み合わせ時の感情を捨てた読み方が、終盤の演劇をより引き立たせていたのも良かった。
今どきめずらしいタバコがアクセント
チェーホフを知らないと充分味わえないかも。
長い映画で静かに展開するが、長さを感じさせない。
脚本がいいのだろう。
赤いSAABと広島の海、島並がうつくしい。
納得して生きていくことを悟るには、チェーホフが必要?
劇中劇のセリフだけでは、物足りなかった。
3時間の地味な作品を長く感じさせない凄さ
派手なことはなに一つ起こらない、個々人の内面だけを描いた作品、それがなんと3時間の尺、でもなんと長いと感じない
観る側の日常と同期する淡々としたリズムで物語が進む
そしてそういうゆったりとした日々の流れの中に、時々「なぜ自分はあのとき」って悔恨が混じるのも、観てる側と重なる話だろう
でもいつの日か、そんな自分の心の奥底のわだかまりをぶつけ合える誰かと出逢えたなら、そこから人生は変わるのかもしれない
みなでいろんな困難を分かち合って、手を携えて歩みを重ねないと、あのラストシーンは実現しない、だから彼女は微笑めたんだろう
美しくて強い作品でした
正しく傷つけない男たち
単行本で約60ページほどの短編をどうやって3時間の映画に仕上げたのだろう?
そんな疑問を持ちながら映画館へ。
「ドライブ・マイ・カー」という作品は『女のいない男たち』という全部で6編の短編からなる単行本に収められていますが、映画はあと二つの短編「シェエラザード」「木野」からも素材と着想を得ていました。そして、広島での演劇祭という原作には無い設定やこれもまた原作には無いみさきの生まれ育った村へのプチロードムービー的な要素を織り込んで構成されています。
村上春樹さんのファンでなくとも、この短編集を読んだ人にとっては、かなり満足度の高い素晴らしい出来上がりだと、私は思いました。
男女関係における困難に直面した時、多くの場合、男は自分が傷付くことをおそれ、現実逃避を選ぶ。
女性の言動の理解できない部分(浮気も含めて)について、自分が納得出来る合理的な理由を求める。
本当には納得できなくても、相手が金持ちだから仕方がない、みたいに〝自分の負け〟を認められる理由が欲しい場合もあると思います。
本当は大事なことを言ってるつもりなのですが、自分の表現だと安っぽいですね。
なので、一部原作から引用します。
「木野」という短編の中に、映画で使われた部分も含めてこんな文章があります。
『おれは傷つくべきときに十分に傷つかなかったんだ(中略)。本物の痛みを感じるべきときに、おれは肝心の感覚を押し殺してしまった。痛切なものを引き受けたくなかったから、真実と正面から向かい合うことを回避し、その結果こうして中身のない虚ろな心を抱き続けることになった。』
映画も文学も人それぞれが好きなように受け止め、自由に想像力を働かせればいいと思ってますが、その素材というか元ネタとなる映画や小説を共有する人が多ければ多いほど嬉しいのは紛れもない事実です。
映画を観る前であろうが、観た後であろうが、ひとりでも多くの方がこの原作本を読んでいただけることを祈ってます。
※原作に出てくる車は、黄色のサーブ900コンバーティブルです。実際に調達するのが難しかったのか、何かの意図で赤いサンルーフにしたのかは不明です。
う〜ん、これは愛おしい3時間だった
舞台俳優・演出家の家福悠介と脚本家の妻・音の夫婦生活を描く第一章。
幸せかと思いきや少し複雑。
妻の浮気をやり過ごしてきた悠介。
「帰ったら話がある」と言った音がその日に逝った。
音の話を聞けなかった悠介。
早く帰っていたら救えたのではという自責の念。
二年後の広島。新たに舞台を演出することになった悠介と彼の専属ドライバーになったみさきをゆっくりじっくり描く第二章。
赤色のSAAB。
稽古場から宿までの片道1時間。
心地よいみさきのドライビング。
音が吹き込んだ台詞のカセットテープ📼
ワーニャ伯父さん。
そこに悠介とみさき、そして音がいた。
「母を殺した」というみさきの自責の念。母親の被害者だったみさきの意識の中で加害者となる瞬間を思った。
お互いの抱える傷を深く知ることとなる悠介とみさき。二人が背負った十字架は降ろせないけど何グラムか軽くなりそう。
そう、前を向いた清々しいエンディングだった。
今年の日本映画のベストの一本だろう。
人間の心の弱さが凝縮された179分
この映画を観ると、自分の弱さときちんと向きあえるような気がしてきます。
後部座席での西島さんと岡田さんのやり取り
舞台での西島さんとパクさんのやり取り
雪上での西島さんと三浦さんのやり取り
この3シーンは特に秀逸でした。
大切な人を自らのせいで失った = "殺した"人たちへ
音の引き合わせ --- 出会べくして出逢ったふたり。見殺しにした、(比喩的でも)人を殺した = 残された者の生き方。自分と向き合うことで、完璧じゃない大切な人のそんな欠点や嫌な部分もありのまま受け入れられるかも。すべてが嘘偽りなく共存するその人。少なくともそうした努力や歩み寄り、理解に努めること。たくさん傷付いた者たちがそれでも歩みを止めないで生きて生きて生きた先に待っている景色。一種そうした象徴としての舞台・広島のようにも思えた。傷の舐め合いとかじゃなくて、互いの非も時に認めながら肩を寄せ合ってそれでも前を向く。そして静かなカタルシス。
世界の村上春樹 × 濱口竜介監督 = 作家主義というか独特かつ確固たる個性の溶け合いが唯一無二の世界を形作っている。ひたすら画がいいこの物語と登場人物たちに引き込まれている自分がいた。多様性に平和への希求、平坦じゃない道のりをゆっくり滑らかかつ丁寧に描く人生というロードムービー&キャラクター映画。病気の身近にある、そして突然訪れる恐ろしさも実感。このいつまで経っても終わりの見えないコロナ禍において必要以上に気をやまず生き抜く術も垣間見えるかも。
自分を差し出せるテキスト
とても大事にされているのが分かるので --- どんな役でもワーニャ伯父さんでも、やっぱりあの髪型・アシンメトリー前髪は崩さない西島さんの訥々とした、と言うと語弊があるかもしれないけど、あの普段に近い雰囲気がよく合っていた。非喫煙者からの印象だけど、『MOZU』とかの頃と比べるとタバコ(を吸う役)もだいぶと慣れてきた気がする。再ブレイク以降、やっと映画好きに見合った出演作が来たなと。【劇中の台本読みのように淡々とした話し方、台詞回しは何も彼だけじゃなく、濱口監督のスタイル演出方法のよう】。運転の上手い人の車に乗っているような心地いい作品だった。
また、いつからか様々な役柄で二番手、三番手と主演以外の地位に落ち着いた感のある岡田将生も好演。【不祥事に懲りないキモチャラ軽薄イケメン俳優(何も役者に限ったことでなくアイドル、ミュージャン、そしてどんな分野においても益々ルッキズムの台頭する現代において何人も思い浮かぶ有名人の顔!)の末路がリアル】。だけど、上述したような部分で主人公・家福と似た者同士じゃないけど、彼もまたある面を象徴していて【表裏一体・背中合わせ】。鏡に囚われる。深い、どこまでも深く考えてしまい、魅せられる。
OK、今日はここまで。That's it for today.
観る人を選ぶ作品
原作が村上春樹ということで内容が完全に文学・芸術寄りの作品です。私みたいなエンタメ映画ばかりを観ている人間にとって内容が難解過ぎてこの作品の良さ、本質、言わんとしていることが正直良く分かりませんでした。でも、そうだからと言って退屈な映画だったかと言われるとそうでも無い不思議な作品でした。
ドライブのシーンで使用される車がSAAB 900 turboというかなり渋い車だったのが良かった。
ラストは主人公が舞台上で拳銃で自殺して終わるのかな?と思っていましたが全然違いました。
超退屈な作品…ではなかった
封切り日初日に鑑賞。座席の半分しか客入れしないのだが、それがほぼ埋まった印象。
導入部、主人公とその妻とのセックスに絡めながら、物語を語っていく手法が退屈でどうなることか、と思いながら見始めた。しかし、その妻が亡くなってからの展開。劇中劇として、演劇人である主人公、それを運ぶ女ドライバー、俳優らとのかかわりが、だんだんとリズムを持ち、生きていくことの意味を見る者に示していく、という非常に高邁な内容であった。
映画をあまり見ない人、娯楽性の高いものしか見ない人にはかなり辛い3時間かもしれない。しかし、生きていくことに何とはない疑問、苦しさを感じているような人がこの映画を見たら、かなり心を動かされると思う。
その意味で、生きていくことに難儀を感じているなら、ちょっと騙されたと思って映画館に足を運んでほしい。
西島秀俊と岡田将生しか知った俳優が出ておらず、結構重々しい展開だが、決して長尺を長いと感じさせないほどよい濃さの物語に引き込まれるはずだ。
カンヌ映画祭で4冠というのも、納得の内容、と言っておく。
風景、光を見ていた
チェーホフ以外の言葉が、なんかうわついていてしっくりこなかった。やはり村上春樹さんは苦手だな。
半分以上チェーホフか…
だから良かったとも言えるのだけれど。
3時間、風景、光、海、雪など、観ていられる映画ではあった。ドライブシーンは良かったけど車酔いしそうだった。
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