「全くもって沼のような作品。 丁寧とかでなく緻密に作られている様は圧...」ドライブ・マイ・カー 甘酒さんの映画レビュー(感想・評価)
全くもって沼のような作品。 丁寧とかでなく緻密に作られている様は圧...
全くもって沼のような作品。
丁寧とかでなく緻密に作られている様は圧巻でした。
家福悠介(西島秀俊さん)は愛していた妻の音(霧島れいかさん)の運転が嫌いだったし。
音 が望まない物は自分だけ望んでも仕方ないと、音 と同じ人生を選択したし。
わかっているのに見ないふりしてる悠介に
ごめんね。と、あなたで本当によかった。と言える 音 だったし。
だけど、2人にとっての最後の八目鰻のくだりを話し聞く互いの目は
身体は重なり合っていても、心の通わないビー玉みたいだったのが印象的で
心と肉体のバランスが美しく表現されていた。
え?ここまでがプロローグですか?って すでに驚きの没入感。。。。で、
村上春樹の世界感のモダンな映像美から、いつしか物語へと没入させる展開は見事。
現実と過去、過去からの現在、
チェーホフの戯曲「ワーニャ伯父さん」が絶妙に織り込まれているこの作品。
この戯曲の最後。
辛く苦しい心を吐露するワーニャに、ソーニャが語りかけるくだりが、
話をする約束をしたあの日、家の立体駐車場前で止まったまま、
車の中でテキストテープが淡々と点眼しながら流れる。
その「ワーニャ伯父さん」の同じ戯曲シーンがラストの舞台にもリンクしている。
すなわち、時間軸では進むが過去と現在に繋がり
まるで飲み込まれていくように現実が感情を残したままに動いていくが
それぞれの人生のこれからに進んでいく道標ともなる。
許せない自分の罪、向き合えない真実、そして得体の知れない後悔。
しかし、生きていること、生きていくことを肯定していく尊さを強く感じる作品でした。
戯曲「ワーニャ伯父さん」を知らない人は、
観る前か、後でもWikipediaででも少し調べれば、この作品をより味わえると思います☺️