劇場公開日 2021年8月20日

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「岡田将生は好感度低めの役がなぜか多い。」ドライブ・マイ・カー ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0岡田将生は好感度低めの役がなぜか多い。

2022年4月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

心に傷を負った人々の「再生」の物語と言えばそれまでである。決して分かりやすい内容ではないので、想像力を働かせないと何が起こっているのか見落としてしまう可能性大である。しかし緻密に脚本が作られているのは分かるし、静かで独特な雰囲気に思わず引き込まれてしまうのは作品の力である。演劇の準備が進んでいく過程で様々な思いが交錯しながら、すべて「再生」のエンディングへと繋がっていくのは見ごたえがあった。主人公の悠介は、舞台ではいつも人間の内面深く入り込んでいるのに、実生活では妻の内面に踏み込むのが怖くて取り返しのつかない後悔を抱えてしまう。彼の「再生」に大きく関わってくるのが、役者の高槻であり、ドライバーのみさきだ。二人とのやり取りが面白いが、その大半が車の中というのもこの作品を象徴している。この車は妻との想いが詰まった場所であり、いやでも彼女の事を意識してしまう。二人との関係を通じて次第に悠介の心境に変化が生じていく。「車の中」と「舞台稽古」のシーンが二つの大きな柱になっているが、このあたりが海外で評価されたポイントになっているのかもしれない。日本人にはあまりなじみがないが、ベケットやチェーホフは欧米ではスタンダードであり共感しやすいのだろう。演劇は悠介の存在意義そのものであり、最後は演劇によって実人生の癒しも得る事ができたように思われる。
見る人によってそれぞれ感じる所はある作品であるが、全員がスタンディングオベーションで賞賛するのも違和感がある。各自どれだけ心が動いたかということで、評価は様々な作品だと思う。

ガバチョ