「優しさと嘘」ドライブ・マイ・カー 赤ヒゲさんの映画レビュー(感想・評価)
優しさと嘘
家福音(霧島れいか)がカセットテープに吹き込んだ演劇シナリオを夫の悠介(西島秀俊)が繰り返し聴くシーンがとても印象的でした。愛車・古いサーブ900の中で、日常的に妻の声を聴く夫は、実に幸福な夫婦関係で満たされている、と思わせておいて、ある日を境にひっくり返る展開にドキッとしました。「長い映画だから、途中で眠くなるかな」なんて友人と話していましたが、杞憂でしたね(笑)。美しい妻への普遍的な愛が崩れていく、いや、そうはならないのか…。この微妙な物語の繊細な心模様を表現する西島秀俊さんの演技が素晴らしかったです。家庭や妻を大切に思う優しさが嘘になってしまうところは、どこか「人魚の眠る家」(18)で西島さんが演じた夫ともかぶりました。
コメントする