「ひたすら思考を要求する映画」ドライブ・マイ・カー Yukさんの映画レビュー(感想・評価)
ひたすら思考を要求する映画
物語の中で幾重にも物語を語り、巧みに組み入れ、下手な演出だと滅茶苦茶になりそうだなと思いつつ、そこはやはり村上春樹作品、端正な清潔感とともに理路整然と物語が組み上がり引き込まれていく。
丁寧に1シーンずつ、ひたすら思考する事を要求する、示唆にあふれた映画。劇中、観客に考えさせる量の何と凄まじいことか。画づくりも、いかにも考え抜かれた精密感、静寂感に満ちたものになっている。
思索の深掘りが試される気分と、日常に慣らされた頭が少しリセットされた感覚を覚える。これは村上春樹の小説を読んだ後味そのものであって、同じものを映画でも感じるとは思わなかった。
セックスの際に語られる創作物語が夫婦のきずなになり、仕事になるという下りは村上春樹ならでは。他の作家が書いたら気持ち悪くて許されないだろう。
各映画賞を受賞しており、これは納得出来るが、子供と一緒に観られる娯楽映画ではない。「かもめ」くらいしか読んでなかったチェホフも読んでみようか。
最後にサーブに乗っていた犬は、食事に招かれた家に居た犬ですよね?穏やかで暖かい未来を感じさせるラストも映画らしくて良かった。
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