劇場公開日 2021年8月20日

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「魂の救済が原点か?」ドライブ・マイ・カー くぼたんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0魂の救済が原点か?

2022年3月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

最初は、ちよつとビックリした。妻 音と、家福の濡れ場からはじまっていたから。これは選択する映画を間違っていたかしら、と思ったが、どうも違う。宗教的に夫に、物語を紬ぎ出し語り出す妻。それを聞く夫‥やがて二人の現実と、妻の語る架空の物語がシンクロしてくる。夫役、西島秀俊の無表情な仮面が、舞台という仮想世界で、急に生き生きと生を語り始めるにいたりどちらが、生きているという実感を、感じさせるのかあやふやにわからなくなる。西島秀俊、とヒロインドライバーの岬の紬出す醜い現実の世界。西島演じる演出家、家福と俳優たちの作り上げてゆくチエーホフの演劇の舞台との対比が、映画を奥行きのあるものにさせた。俳優に韓国のろうの女性を、手話で台詞をいわせたり、各国の俳優の母国語で語らせたり、革新的な舞台の構成になつている。手話で台詞を語るソーニヤのセリフ。言葉でなくからだで表現した、生きるということの辛さを、それでも私たちは、ただ生きていきましょう~生きていかなくてはならない~主人公家福の人生の悔恨に繋がるところだ。また孤独なドライバーの岬の過去とも重なる。ソーニヤの体で表されたセリフは辛さに耐えて残されしものの、生きることの意味を、教えてくれたように思う。いろいろなことを考えさせられる深みのある映画。最後の岬の家福の車にのつて買い物に、出かける姿に希望と救いがあった

くぼたん