「傷ついた魂の再生物語」ドライブ・マイ・カー ニョロさんの映画レビュー(感想・評価)
傷ついた魂の再生物語
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長さは感じなかった。テンポよく場面が展開していく。
亡くなった妻の裏切りをきちんと受け止めなかったために前に進めなくなった男、家福と虐待された親を見殺しにしてそこから逃げた女、みさき。そして裏切り相手が目の前に現れたことで、物語が大きく展開していく。
家福は自分の分身のような車に長く乗り続け、その中で聞く妻の声のテープでセリフを言うという習慣を変えることなく、過去に縛られ続けていた。そしてそこに初めて他人のみさきがドライバーとして加わったのだ。
この時、すでに物語は動き始めていたのだろう。
裏切り相手に妻のことを語られ、深く傷つく。この男は何のために家福の前に現れたのか。同じ相手を愛したことで思い出を語りにきたのか。
過去の痛みを抱えた2人がたどり着いた場所で、自分の気持ちに向き合う。そこで出た結論は2人の再生への予感となって、映画のラストを明るくしてくれた。
とてもいい話だったしインパクトも感動もあった。
ただ、村上春樹ファンとしては、ここまで全てを語らせる必要があったのかとちょっと引いてしまった。もう少し、余韻というか、観客に委ねる部分があってもいいかなぁと思った。
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