「東京、韓国、広島、北海道」ドライブ・マイ・カー akkie246さんの映画レビュー(感想・評価)
東京、韓国、広島、北海道
村上春樹原作。「女のいない男たち」の中の一編「ドライブ・マイ・カー」を深く掘り下げて映画化。山本晃久プロデューサーの企画で、最初は韓国釜山ロケを予定したらしい。しかしコロナ禍で中止。広島にロケ地変更。そのため、広島の国際演劇祭なのに韓国人主催者がいたのである。ラストも韓国になっていた。
原作に出てきた修理工場の大場さんが、みさきとカフクを引き合わせる韓国人のコン・ユンスになっているのだと思うと、この映画の膨らませ方は原作の二倍以上だと思った。
映画を見る前、「ドライブマイカー」しか読んでいなかった自分にはわからなかったが、「女のいない男たち」から「シェエラザード」「木野」の要素をそれぞれ前半部と後半部に取り入れているそうだ。
原作から変わっていることですぐ気づくこと。主人公のクルマ(サーブ900)の色がまず、異なります。原作では黄色だったのが、映画では赤。そして最初は後部座席に座るところとか。
ほかに原作にはなかった要素、国際演劇祭のだしものとしての「ワーニャおじさん」。多言語演劇という実験的手法。
日本語、中国語、韓国手話、タガログ語、ドイツ語。インドネシア、マレーシアも?
監督によるとリハーサルシーンのレッスンでは、日本語→韓国手話、韓国手話→韓国語というような通訳をしていたらしいです。ソーニャ役のイ・ユナを演じたパク・ユリムは、一言も発していないが、手話も演技らしい。通訳や手話通訳が何人もいてスクリプターは大変だったと思います。
奥さんの名前。女優から脚本家になったという経歴。情事後の興奮状態で話す空想の女子中学生の話。子供の亡くなった年齢。高槻のキャラクターがやや若いこと。
運転手みさきの育った家庭環境もかなり掘り下げられていました。広島に来てゴミの回収車に乗っていたとか。
霧島れいかさんも「24JAPAN」のきつい上司とは一味違った役でしたが、「ノルウェイの森」(10)にも出ていたとは覚えてませんでした。一回しか見てないので。あと西島秀俊は「トニー滝谷」の語りもやっているそうです。
岡田将生くんが、「大豆田とわ子」とはまたひと味違った軽めの男を演じてハマっていました。
多分、カフクにはめられたんだけどね。
あまり物事をよく考えもせず、軽はずみな行動をとってしまうことで他人に迷惑をかけていることの無自覚さをカフクは高槻につきつけた。そしてタカツキは、その報いを受ける。
けして岡田くんがそういう人ではないのだろうけれども。演技が上手いというだけだ。
「ワーニャ伯父さん」「シェエラザード」「木野」を読み、監督の「寝ても覚めても」と山本プロデューサーの「彼女が名前を知らない鳥たち」も見てみたい。その上で本作品を見直すとどうなるか確かめてみたい気もする。