「約3時間の車の旅」ドライブ・マイ・カー せつこんさんの映画レビュー(感想・評価)
約3時間の車の旅
妻を亡くした舞台俳優兼演出家の家福が演劇祭の稽古のため広島へ来る。そこで出会った運転手のみさきと交流する中で自分と向き合う話。
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素晴らしかったです。素晴らしいのはわかる。けれど私のチンケな感性じゃこの映画の1/3の良さもわかってないんだと思う。大絶賛のレビューが多い中分からないものを分からないと言って良いんだということを伝えるために分からなかったとここに書いておく(笑).
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妻の語る新しいドラマのストーリーに、『ゴトーを待ちながら』『ワーニャ伯父さん』が本作の登場人物達の感情とリンクしていて、さらにみさきの語る過去の話、高槻の語る家福の妻との話、色んな作品内物語が倒錯していって段々とフワフワしてくる。
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このフワフワ感何となく記憶にあるなと思って見ていたら思い出す、家族旅行に行った時、車の中で窓の外を見てぼーっとしてた感じ。みさきの運転の安定感がそのままこの映画の心地良さに繋がる。(私が見た回は近くに4DXのスクリーンがあったから床が結構揺れて本当に車に乗ってるみたいだった)3時間あるけど終わった後そこまで疲れた感じはなく、あ、もう家に着いちゃったんだって感じ。
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あとはディスコミュニケーションの話でもある。家福の演出は役者がそれぞれ母国語を話すので、役者同士相手が何を言っているのか分からない。さらに、家福とみさきはもう亡くなってしまった人と話すことが出来ないことに少なからずわだかまりを抱えている。
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最終的に家福は、コミュニケーションをするためにはまず自分の言葉に耳を傾けるべきだと気づく。(これを聞くと「テキストに自分を差し出す」って意味も分かるような分からないような)そこで私も同時に、この映画が分からないならまずは自分と対話せよってことなのかなと腑に落ちました。
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