「コトバに頼りすぎていないか??トラウマ物語は昨今流行りなのか?」ドライブ・マイ・カー ゆっきーさんの映画レビュー(感想・評価)
コトバに頼りすぎていないか??トラウマ物語は昨今流行りなのか?
主人公の妻は現実には居ないような女。
セックス中の朗読が棒すぎて引いた。
これは別の短編も引用している。
全てにおいてこんな奥さんいないよねえ。なんか暗いし。
どうも村上ワールドにいかにもでてくる妻っぽ過ぎて、映画では逆にリアリティーに欠けるしその分説得力が薄くなる。
20年も連れ添っていて、しょっちゅうセックスやらディープキスやら、行ってきますのキスやら、よくそんな情熱があるなあと、半ば感心して観てしまった。
何故こんなにベタベタしてるのか?ふたりとも『何を』四六時中確かめていたいのか?
西島秀俊もいつも演技がかってて、小説の台詞を映画用に変換せずそのまま話してるみたいに聴こえる。脚本にかなり無理がある。どうも人間(生身の役者)が演じてるように観えない。
チェーホフの戯曲を劇中劇とし妻のテープを使い、主人公の人生とリンクさせていた、まあよくある手法だけど、どうせ使うなら……。
村上小説に出てくる主人公や周りの人たちは、台詞がかなり独特で、普段こんな言葉遣いしないよなあ〜みたいなところが多々あるから、違和感を感じるのだと思う。
棒と云えば、劇場の管理者?のおばさんが酷い棒で、彼女が喋る度に失笑してしまった。
アジア人で、日本語がつたない人な役なのか?
韓国のコーディネーターの男性は台詞上手かったし、一番演技が自然だった。始めから彼の人柄に親近感がわいた。
良かったのは韓国人夫婦の素朴で温かい家庭。唯一ありそうだなあって感じた。特にふたりの表情がいい。
劇中劇の中の中国人女優と韓国人女優の公園での演技がとても自然で良かった。2人ともそれぞれに魅力があり、美しい。
ドライバーは不幸な生い立ちのてんこ盛り。帰郷した時の、母には別人格がいたとか、まだ盛りますか?もうお腹いっぱいですよぉ。みたいな。。
原作より10歳は若い設定でしょうか?
私は最初原作読んだとき、ドライバーはアラサーくらいかなとイメージしていた。
無口だか、どこかドッシリしていて、少しふくよかな身体を想像していた。この女性なりの人生もありそう。
マイカーも、お金持ちが乗るようなもっと大きな車を想像していたのでコンパクトでビックリした。
車には詳しくないです。
岡田将生は、自らをカラッポだと言いつつ、その後の熱を帯びた話し方を見ていると、全くカラッポな人には見えない。
主人公と妻がセックス後、神がかった何か?が降りてきて脚本が出来たとか、ジョークか??
文字表現ならばこの不思議な設定アリだけど。台詞にすると安っぽくなっちゃうんですね。
安っぽいと言えば、ドライバーが主人公のマイカーを運転した時の感想も、台詞にすると重みがなくなる。小説のように印象に残らなくなる。コトバが留まらず、流れてしまう。
そして作り手側はコトバに頼りすぎていませんかね?
岡田の傷害致死も突飛。いくらカッとなりやすい性格だからといって、ケガだけでなく亡くなるだなんて。
作り手側が少し乱暴すぎやしないか。
ラストは、せめて映画の中だけはこんなご時世を忘れたいのに、何の意図でドライバーはマスクをしているのか?
『男のいない女たち』
正に主人公は男たちなはず。
なのに、ラスト女が締めくくる。女の出直し映画みたいになっちゃいました。
原作ではドライバーが、
『奥さんは、男と寝ただけですよ。ただそれだけですよ。』
だから、意味なんてないんだ。
それで主人公も読み手も救われる。
そして、絡まりあった糸がどうしても解けないと、もがき苦しんでいたと主人公がその台詞で立ち直る。
実はもっとシンプルだったんだと。
そう、原作は重くも暗くもなくもっとアッサリしてて軽やか。
村上春樹の短編はあんまり読んでなく、スルーしてるものが多い中、この短編は割と好きで印象に残っていた。
今作と、大阪弁を話す男の話、バーのマスター木樽の話。
中でも今作はワタシの中では『沈黙』『眠り』と並ぶくらい傑作と思う。何というかカラッとしてるんです。
まあ、好みですが…。
映画はストーリーがブレブレで、短編小説の良さが全くなくなってしまった。
村上春樹ファンが創ったファンによるオマージュ作品みたいな出来になっちゃったなあ。
村上作品を映画化するには、そのままの文体・コトバに頼って表現するのはやはり難しいのでは?と感じた。
この作家さんがよく仰る『リズム』です。リズムが正直、チグハグしているように観える。
ドライバーの帰郷と、韓国への移住の尺は必要だったろうか?
劇中劇のラスト、聾唖者の女優が素晴らしい演技をした。そこには彼女の発声するコトバは勿論なかった。
手話と、時折パシッと手を打つ音だけ。
これ以上、足すものがあるかな。
ここで映画の幕引きしても良いくらい。多少の余韻を残して…。
韓国ユニットがやたら多かったのは日韓合作なの?と思いきや…日本映画でした。
同じ韓国ならば圧倒的に韓国映画、『バーニング』の方が脚本もよく練られていて、暗喩が効いてて、かなり出来が良いと思った。暗喩は村上作品の鉄板。
あくまで原作読んだことある人間の個人的な感想です。(村上作品を低評価にすると、たまに怒る人いるけど怒んないでね)